artscapeレビュー
2013年04月01日号のレビュー/プレビュー
IRON ∞ MAN
会期:2013/03/13~2013/03/24
Creative Center Osaka(名村造船所跡地)[大阪府]
元造船所という特異なシチュエーションを舞台に、造船とゆかりの深い鉄を駆使する立体作家5名が展覧会を行なった。屋内では、タムラサトルが接点の動きにより無数の白熱灯が揺らぐように輝くタワー型のオブジェを展示し、角文平は鉄線のグリッドからなるビル状の立体内に住宅の賞オブジェを並べた作品などを発表。屋外では、橘宣行の巨大オブジェ《宇宙戦艦タチバナ》を先頭に、飯島浩二の鉄犬とサーカスのオートバイ曲芸のような作品、久保田弘成のボートを用いた大作が後に続いた。昨今珍しいストロングスタイルの展覧会。久々に痛快なカタルシスを味わった。
2013/03/15(金)(小吹隆文)
KOBE ART LOOP 2013
会期:2013/03/01~2013/03/31
ギャラリーほりかわ、GALLERY & SPACE DELLA-PACE、Pocket美術函モトコー、OLD BOOKS & GALLERY SHIRASA、南京町ギャラリー蝶屋、GALLERY 301、ギャラリーTANTO TEMPO、Gallery Vie、ギャラリー開、Kobe 819 Gallery[兵庫県]
神戸の元町・栄町通近辺に居を構える10画廊が、周遊型のアートイベントを企画。内容は画廊の通常活動である個展の集合体だが、マップやスケジュール表付きのパンフレットを作成し、それぞれの存在をアピールしていた。神戸は大阪や京都に比べて画廊の数が少なく、過去に同種の試みが行なわれたことはなかった。しかし、ここ5、6年の間に栄町通を中心に新規の画廊が増え、ようやく面的な展開が可能になった。今回はシンプルな仕掛けだったが、今後も継続しつつ企画性を増して行けば、徐々に効果が現われるだろう。参加画廊に無理のない範囲で、息の長いイベントに成長することを願う。
2013/03/16(土)(小吹隆文)
CARNIVAL カーニヴァル
会期:2013/03/01~2013/03/31
旧横田医院[鳥取県]
鳥取市の中心部にある病院の廃墟で催された展覧会。悪魔のしるしとフジタマの2組が病院内の随所にそれぞれ作品を展示した。主催はホスピテイル・プロジェクト、キュレーションは赤井あずみ。
何より圧倒的なのが、病院の建築だ。地上3階建ての鉄骨鉄筋コンクリート造の建物で、円筒形のフォルムがひときわ異彩を放っている。中心から放射状に広がるかたちで病室やレントゲン室、手術室などが設えられ、内部の空間はいずれも小ぶりで、中心部は外光が届かないせいか、やたらに暗く、そして寒い。けれども、円環状の廊下を歩いていると、方向感覚を喪失するような感覚が生まれるのが、おもしろい。
そこで不意に出会うのが、フジタマの映像作品である。TVモニターやプロジェクターで見せられているのは、人形や民芸品を使った謎めいた物語をはじめ、中高年のバスツアーの記録映像を再編集したもの、ハワイ人に似ている男性など、いずれも不可解な魅力があふれているものばかり。それらを時空がねじれたような空間で鑑賞するから、頭のなかの混乱によりいっそう拍車がかかり、映像から引き起こされる笑いと恐怖が倍増するのである。
搬入プロジェクトで知られている悪魔のしるしは、「蛇籠め」という土着的な祭りをでっちあげ、藁を身にまとわせた参加者とともに力を合わせながら巨大な蛇を会場である旧横田医院に運び入れるイベントを催した。会場には、その記録映像と写真、この病院の模型、搬入した蛇などが展示されていたが、土着的な祭事を人為的に演出するコンセプトには共感できるものの、イベントにも造形化された作品にもさほど魅力を感じなかった。それは、おそらくそれらの作品がおおむね私たちの理解の範疇に収まってしまうからであり、フジタマのように理解の範疇を超越するのりしろが欠落していたからではないだろうか。建物自体がひとつの芸術作品のような奇妙な場なのだから、もっと突拍子もない祭事を想像しなければ、私たちの視線は廃墟の空間をいつまでも彷徨うことになるだろう。
2013/03/17(日)(福住廉)
大駱駝艦・壺中天公演・村松卓矢『忘れろ、思い出せ』
会期:2013/03/15~2013/03/24
大駱駝艦スタジオ 壺中天[東京都]
大駱駝艦壺中天公演の新作は村松卓矢の振付・主演。偏愛的にぼくは村松のダンス・舞台に魅了され続けているのだけれど、その理由のひとつはシンプルなワン・アイディアの徹底にある、そうあらためて感じた。今回、村松が用意したのはロープ。白いロープが上から吊されたところに現われた3人のダンサーたち。何をするのかと思えば、首に巻きつけ、体を傾けた。「おおっ、大丈夫なのか!」と不安になるくらい、顔がきつそう。中国の雑伎団が柔軟な若い女性に軽やかな舞をロープに絡まりながら見せるなんてのとは対極の、三途の川がおぼろげに見えそうになっていそうな、死と生を強く感じさせるパフォーマンス。村松は「縛り」をダンサーにかけて、物理的に動きづらくさせることをかつてもよくしてきたが、これは究極ともいえる(そして比喩ではない本当の)縛りだ。村松が現われると今度は、村松1人に3本のロープが絡まる。さっきまで苦しんでいた3人がロープを引っ張ると村松の腕や脚がマリオネット人形のごとく吊り上げられる。情けないような恥ずかしいようなポーズにさせられる村松に苦笑を禁じえない。こうして、「ロープに縛られるダンサー」のヴァリエーションが舞台上で次々と展開していくのだ。ダンサーはこの縛りに表現の自由を奪われるわけだが、表現の意味を受け取る必要がない分、観客は目の前の身体が被っている出来事に集中できる。それはじつにエロティックな体験だ。的確なアイディアをくぐり抜けた身体が滲ませるエロティシズム。それは壺中天公演の大きな、そして希有な魅力だろう。後半に至り、ロープはマス目状に舞台を覆うと、村松はそこここのマス目から首を出したり軽く絡まったりするが、前半までの強い絡まりがないぶん、しまらない。「苦しませてくれないロープがいじわる」だなんて思ってしまう。所在なげな村松が可笑しい。ロープと身体の関係の持つ幅が見えてくるのも面白い。こうした豊かさも、ワン・アイディアに徹するがゆえに引き出されたことだ。
2013/03/19(火)(木村覚)
プレビュー:FESTART OSAKA 2013
会期:2013/04/08~2013/04/20
ギャラリー白、瀧川画廊、アートサロン山木、番画廊、Yoshimi Arts、コウイチ・ファインアーツ、Port Gallery T、ギャラリープチフォルム、美術處 米田春香堂、美工画廊、ギャラリー新居、山木美術、谷松屋戸田ギャラリー、アート・遊、ギャラリー風、画廊大千、ワタナベファインアートギャラリー、とりゐや美術店、Nii Fine Arts、福住画廊[大阪府]
大阪市の西天満、北浜、淀屋橋、肥後橋という隣接する4エリアの20画廊が、足並みを揃えて展覧会を開催。トークショーやパーティー、ギャラリーツアーなどの関連イベントも多数開催される。いわゆるニューカマー向けの啓蒙イベントだが、画廊の取り扱い分野が現代美術、近代美術、工芸と幅広いため、美術通にとっても慣れないジャンルの画廊に足を運ぶチャンスとなる。観客と画廊の関係をシャッフルすることで、新たな出会いが生まれることを期待する。
2013/03/20(水)(小吹隆文)