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2014年02月15日号のレビュー/プレビュー

高谷史郎「明るい部屋」

会期:2013/12/10~2014/01/26

東京都写真美術館 B1階展示室[東京都]

続いて、高谷史郎の「明るい部屋」展へ。カメラの起源である閉じた箱のカメラ・オブスキュラはしばしばアート作品において参照されるが、これは別の光学装置カメラ・ルシダをめぐる写真、映像、インスタレーション、そしてパフォーマンスの記録である。ブラックボックスとなる建築的な箱をとり払い、そのメカニズムの美しさをむき出しにして、新しいイメージ生成の場に立ち会わせる内容だった。

2014/01/13(月)(五十嵐太郎)

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伊坂幸太郎『仙台ぐらし』

発行所:荒蝦夷

発行日:2012/02/18

伊坂幸太郎の『仙台ぐらし』を読む。日常のエッセイ集で、前半は本当に普通のエピソードが多いのだが、震災へのコメントを避けてきた彼としては珍しい当時の記述は、やはり仙台在住ならではの内容だった。スーパーマーケットの開店情報を聞いて行列をするといった些細なことだが、関東圏の作家はこういう震災直後の体験をしていない。巻末の短編小説「ブックモービル」は、ボランティアによる移動図書館の話だが、視覚的にわかりやすい被害のシーンを求める映画監督に噛み付くあたりに地元の視点を読みとれる。

2014/01/13(月)(五十嵐太郎)

山元彩香「Nous n’irons plus au bois」

会期:2014/01/11~2014/02/08

タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム[東京都]

1983年、神戸市生まれの山元彩香は、2009年からフィンランド、エストニア、ラトビア、フランスなどでポートレートの撮影を続けてきた。モデルは10歳~20歳代の女性。6×6判のカラーフィルムで撮影されるそれらの写真に写し出されているのは、少女から大人の女性へと流動的に変容しつつある、不思議な手触りの「いきもの」たちの姿だ。ことさらに、特異な撮り方をしているわけではないのだが、今回タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムで展示された「Nous n’irons plus au bois」の写真群を見ていると、彼女たちのなかに潜んでいた、時には禍々しくもある魔術的な心性が明るみに出されているように感じる。
その「翻訳不可能なイメージ」を引き出すために、山元は撮影に際して、あまり目立たないけれども細やかな操作を施している。顔に布を被せたり、唇から赤い糸を垂らしたり、髪の毛に花を編み込んだり──それらの遊びとも祈りともつかない行為は、山元とモデルたちの共同作業というべきものだ。どうやら彼女たちは言葉でコミュニケーションを取り合っているのではなく、あたかも動物が互いに皮膚を擦り付けあうように意思を伝達しているのではないかと想像できる。そのもどかしいけれども、強く感情を共振する身振りの積み重ねが、このシリーズに説得力を与えているのではないだろうか。今回は9点の作品が発表されたが(同時刊行のカタログには15点掲載)、まだこれから先どう動いていくのか本人にもよくわかっていないようだ。このまま、さらにコントロール不可能な領域に踏み込んでいってほしいと思う。

2014/01/14(火)(飯沢耕太郎)

Wake Up, Girls! 七人のアイドル

映画『Wake Up, Girls! 七人のアイドル』を鑑賞した。同時にこれの続きとなるテレビ版のアニメも1月からスタートしているが、映画版は、地元アイドルがデビューするまでを描く。興味深いのは、仙台を舞台にしていること。物語の内容は、まあ想像の範囲内だが(応援したくなる程度には面白い)、仙台のいろいろな場所を具体的に描写しており、仙台を取り上げる映像としては画期的な作品だ。あきらかに聖地巡礼を狙ったものだろうが、地元の人だと倍以上楽しめるだろう。

2014/01/14(火)(五十嵐太郎)

設計のプロセス展/PLOT: process of design

会期:2013/11/23~2014/02/11

GA Gallery[東京都]

久しぶりにGAギャラリーを訪れ、「設計のプロセス」展を見る。藤村龍至が、あいちトリエンナーレ2013において展開したあいちプロジェクトの2系統の最終統合版が展示されていた。昔のGAギャラリーはオブジェみたいな模型と、外国人建築家のデータ打ち出しの展示だけで、会場に足を運ばなくても、それらを紹介するGAの雑誌を読めば済むと思うことがたまにあったが、今回はプロセスの情報量が多くてよい。ここも変わったのか。

2014/01/14(火)(五十嵐太郎)

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