2018年06月15日号
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artscapeレビュー

武田陽介「Stay Gold」

2014年05月15日号

会期:2014/03/22~2014/04/19

タカ・イシイギャラリー[東京都]

単なるセンスのよさというだけではなく、スケール感と未知なる可能性を併せ持った若手写真家が登場してきた。東京・清澄白河のタカ・イシイギャラリーだけでなく、タカ・イシイギャラリーモダン(3月26日〜4月19日)、空蓮房(3月26日〜4月25日)、TRAUMARIS|SPACE(3月26日〜4月27日)でもほぼ同時期に個展が開催されたということからも、1982年愛知県生まれの武田への期待度の大きさがわかる。
「代表作14点」が展示されたタカ・イシイギャラリーの「Stay Gold」展と、SUPER LABOから刊行された同名の写真集を見る限り、武田には特定のスタイル、テーマというようなものはない。デジタルカメラを太陽に向けて撮影して光の滲みを捉えた「デジタル・フレアー」のシリーズが、作品のサイズの大きさからいっても目につくが、プリント用紙の地色(白)を強調して電線を撮影した抽象的な作品、金環日食と金星太陽面通過の「天体写真」、シロクマの剥製のような「曖昧な状況」にカメラを向けたスナップショットなどもある。とりとめないと言えばそれまでだが、彼にとっての現実世界のあり方を、さまざまな方向に触手を伸ばしてトータルに捉えようとすることは決して間違ってはいない。日本では久しく現われてこなかった「全体写真家」となる可能性を秘めているとも言える。
ただこれから先、彼の作品世界が、多くの人々に夢と希望を与えていくような強度を持ちうるかどうかと言えば、もう少し様子を見なければわからないだろう。現時点での彼の持ち味と言える品のよさ、お行儀のよさをかなぐり捨て、もう少し感情や欲望をストレートに打ち出していってもいいのではないだろうか。ヴォルフガング・ティルマンスの「コンコルド」のように、「これが本当に好きなんだ!」と手放しで納得できるような写真を見せてほしいものだ。

Yosuke Takeda, "144540", 2014, Light jet print
© Yosuke Takeda / Courtesy of Taka Ishii Gallery, Tokyo

2014/04/03(木)(飯沢耕太郎)

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