artscapeレビュー
秦雅則「埋葬」
2011年10月15日号
会期:2011/09/02~2011/09/14
新・港村(新港ピア)/Under 35 GALLERY[神奈川県]
横浜トリエンナーレの一環として、さまざまなジャンルのアートや文化振興企画を展開している新・港村。その一角のUnder 35 GALLERYは、「35歳以下の現代美術家、写真家、建築家をそれぞれ紹介していく連続個展シリーズ」である。8月6日~17日の西原尚に続いて、秦雅則の展示がスタートした(奥村昂子展を同時開催)。
秦はこの欄でもたびたび取りあげてきたが、僕が今一番注目している若手写真作家のひとりだ。2008年に写真新世紀でグランプリを受賞してデビューし、東京・四谷の企画ギャラリー・明るい部屋の活動を通じて、その表現力に磨きをかけてきた。今回の「埋葬」シリーズを見ても、瘡蓋を引きはがすように心理的なズレや歪みを暴き立てていく作品によって、誰も真似ができない領域に踏み込みつつあるように感じる。秦はこのところずっと、エロ雑誌をスキャニングした画像を微妙にずらしたり組み合わせたりしながら、架空の女の子のイメージを増殖させる作品を発表してきた。今回の展示はその集大成というべきもので、A5判ほどのサイズの小さな写真を300枚以上、フレームにおさめて壁にびっしりと並べ、床にはやや大きめのサイズの写真を12点、やはりフレームにおさめて置いていた。ピースサインで決めている裸の女の子のポーズの能天気さと、身体の各パーツを寄せ集めたゾンビのような土気色の肌とが合体して、悪趣味の極致としかいいようのない強度に達している。ここまで気持ちが悪いグロテスクなイメージ群を見せつけられると、逆に妙な快感が生じてくるのが不思議だ。
秦雅則の作品はどう見てもおさまりが悪い。だが、逆にいつでも分析・分類が不可能であることの凄みを感じてしまう。
2011/09/06(火)(飯沢耕太郎)