artscapeレビュー
モダン・アート、アメリカン──珠玉のフィリップス・コレクション
2011年10月15日号
会期:2011/09/28~2011/12/12
国立新美術館[東京都]
19世紀なかばの素朴派のエドワード・ヒックスから、世紀後半のアメリカ印象派、20世紀前半のモダンな都市風景を経て、1960年代の抽象表現主義のロスコ、フランケンサーラーにいたるまで、1世紀余りのアメリカ近代絵画をたどる展観。外光を浴びた日傘の描写が美しいプレンダーガストの《パッリア橋》をはじめ、自然の風景をモニュメンタルな形態に封じ込めたロックウェル・ケントの《アゾバルド川》、まるで豆腐のような建物がユニークなジョージア・オキーフの《ランチョス教会、No2、ニューメキシコ》、軽快なタッチで一瞬の表情をとらえたロバート・ヘンライの《オランダ人の少女》、夕暮れの高架鉄道を光と闇の対比で効果的に表現したジョン・スローンの《冬の6時》、マンハッタンに建ち始めた高層ビルを幾何学的抽象のように描いたチャールズ・シーラーの《摩天楼》など、抽象表現主義以前のあまり知られていない作品が紹介されて満足度は高い。肝腎の抽象表現主義は10数点出ているが、巨大画面を身上とするグループなのにそれほど大きな作品はなく、かえって貧相に感じられるのが残念。とはいえ、フィリップ・ガストンやクリフォード・スティルらの作品は日本で見る機会が少ないので貴重だ。
2011/09/27(火)(村田真)