artscapeレビュー

モーリス・ドニ──いのちの輝き、子どものいる風景

2011年10月15日号

会期:2011/09/10~2011/11/13

損保ジャパン東郷青児美術館[東京都]

ドニというとゴーガンの下に集まったナビ派の主要メンバーであり、装飾的な画面で知られる一方で、敬虔なクリスチャンとして聖書や神話を主題にした宗教画を残した画家でもある。とりわけモダニストにとって重要なのは、「タブローとはヌードや風景である以前に色彩におおわれた平面である」といった主旨の彼の言葉であり、ここから形式(フォーム)を重視するフォーマリスティックな抽象表現が導かれていくことになった。だが、そんな美術の基礎知識をもって同展を訪れると肩すかしを食らう。描かれているのは神でもヌードでもなく、自分の子どもをはじめとする家族の肖像だからだ。あれれ?と思ってチラシを見ると、サブタイトルは「いのちの輝き、子どものいる風景」。なるほど、日本でのドニの知名度の低さを考えれば妥当なテーマ設定かもしれない。「装飾」とか「信仰」とか、ましてや「平面性」などでは人は入らないからね。

2011/09/13(火)(村田真)

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