artscapeレビュー
レオ・ルビンファイン「傷ついた街」
2011年10月15日号
会期:2011/08/12~2011/10/23
東京国立近代美術館ギャラリー4[東京都]
2階の一室で開かれている写真展。さまざまな国の街角で市井の人びとを撮ったスナップが35点、宙吊りに展示されている。2、3点を除いてモノクロームだ。なんの説明も聞かずにこれを見たら、無表情で無愛想な人々が写ってるだけのつまらない写真だと思うだろう。が、ルビンファインが9.11のテロをニューヨークの自宅で間近に目撃し、その体験をきっかけにテロ事件を経験した都市(東京、モスクワ、ロンドン、マドリッド、エルサレム、ニューヨークなど)の通行人を撮るプロジェクトを始めたと聞くと、これらの写真を見る目も俄然変わってくる……かもしれないが、ぼくにはやっぱりつまらない写真にしか映らなかった。テロを経験した都市といったって、たとえば東京の場合、地下鉄サリン事件が起きてから7年後に撮られものなので、写っている人はだれもテロのことなんか考えていないはず。ほかの都市も同様で、ただ無表情で不安げな通行人のスナップを撮り集めて並べただけだろう。それをもったいぶって「傷ついた街」などと深刻そうなタイトルをつけ、テロへの憎悪と危機感をあおるのはいかがなものか……という見方もできるのではないか。
2011/09/24(土)(村田真)