artscapeレビュー

ロロ『常夏』

2012年01月15日号

会期:2011/10/28~2011/11/05

シアターグリーン BOX in BOX THEATER[東京都]

80年代的なものがところどころで参照されながら、恋愛というか恋愛のドキドキ感へとひたすら向かっていく。そんな相変わらずのロロの新作は、さすがにその純情なユートピアを目指すばかりでは虚しいということか、ところどころに女子のエロいシーンだの男子のカワイコぶりっこのシーンだのがちりばめられ、お話以上に、濃密な部分を適度に避けつつ(その適度さを『週プレ』的と言ってみようか)、若さ溢れるエロティシズムを振りまく役者たちが目立った上演だった。役者たちの(とくに女優陣の)ルックス偏差値が非常に高いことは、良くも悪くも、脚本の元気なさをごまかしてしまう。バナナ学園純情乙女組に似て青春の地獄が描かれているのは間違いない。だが、若い脚本家の三浦直之は、謳歌しなかったはずの80年代的恋愛観をかせきさいだぁレヴェルで(つまり真剣に)信じている気がするのだけれど、だとすると、その思いを誰に向けて放り投げているのかがいまイチよくわからないのだ。アラフォー心をくすぐりたい? いや、そんなはずはない。そんなふうには思いたくない。だから「80年代」はロロの本質ではないとさえ言いたくなる。そうではなくて、〈不可能な恋愛〉を相手への思いだけで突破するという無茶に感動してしまうところこそロロの真骨頂で、それが見たくて、ただそれだけで、観客(少なくともぼく)は足を運ぶのだ。本作でもエビと女の子、ロボットと女の子などの〈不可能な恋愛〉は描かれていた。しかし〈不可能性〉へと問いは深まらなかった。しかし、そこにこそロロの劇的瞬間はあるのではないか、なんて思わずにはいられない。

2011/10/30(日)(木村覚)

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