artscapeレビュー

天才ハイスクール!!!! カミングアウト!!!!!!!!

2012年01月15日号

会期:2011/11/25~2011/11/27

素人の乱12号店、キタコレビルGARTERギャラリー、なんとかBAR[東京都]

Chim↑Pomの卯城竜太が講師を務める美学校の学生たちによるグループ展。高円寺の「素人の乱」のいくつかの店舗を会場にして、8人がそれぞれ作品を展示した。いずれも個人的な動機と社会的な文脈を接続させた作品で、見応えがあった。とくにおもしろかったのは、臼田知菜美。映像を見ると、彼女が見ず知らずの喫煙者たちに一本のタバコを貰い続ける様子が記録されているが、そうして集めたタバコを会場で配布して自由に喫煙できるようにされていた。トイレに入ると、こんどはカフェやパチンコでトイレを借りた臼田がトイレットペーパーを拝借する映像が流され、それが目の前のトイレで使用されているというわけだ。トイレットペーパーの先端を丁寧に折り畳んでいるところがなんとも律儀だが、双方の作品に通じているテーマは、自分の愛嬌を差し出す代わりに、展覧会で必要とされる物資を貰い受けるというエコノミーである。これが、相手に金銭を振り込ませるのではなく、こちらから相手に金銭を振り込むことを説得するChim↑Pomの《オレオレ》と通底していることは明らかだが、本展には臼田以外にもChim↑Pomからの強い影響がうかがえる作家が多かった。それは美術であろうとなかろうと、教育というシステムが決して避けることができない関門であることにちがいはない。だからこそ、彼らの今後にとって重要なのは、これまで学んできたことをみずから解きほぐしていくこと、すなわちunlearningである。その先に、アーティストとして自立する自らの姿が見えるはずだ。

2011/11/27(日)(福住廉)

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