artscapeレビュー
内田繁『戦後日本デザイン史』
2012年01月15日号
日本を代表するインテリア・デザイナーで、桑沢デザイン研究所所長をつとめた、内田繁の最新刊。戦後、日本のデザインが時代とどう向き合ってきたのかを振り返ると同時に、「モノ」から「情報」へと大きな転換期を迎えた、今日のデザインに、ひいては私たちの日常に示唆を与えてくれる。できるだけ多くのジャンルにまたいで記述することや、自分の体験をふまえることを重視したと著者自身が冒頭で述べているように、戦後から2010年までの、日本のグラフィック、インテリア、ファッション、プロダクトデザイン界の出来事を、10年ごとにまとめている。第1章:戦後デザインの出発──50年代、第2章:工業化社会への疑問──60年代、第3章:工業化社会から情報化社会へ──70年代、第4章:デザインの多様性──80年代、第5章:環境の時代に生きるデザイン──90年代~2010年といった構成。たとえば、1960年に日本で初めて開催された国際的なデザイン会議として有名な「世界デザイン会議」で、ハーバード・バイヤーが行なった特別演説など、当時の資料や記録を直接引用する部分があると思えば、戦後の日本のデザインを形作ってきたひとりであるだけに、思想や背景はもちろん、当時を雰囲気までを上手く織り交ぜて、読む人を飽きさせない。よく整理され纏められていて、なお面白い。専門書としても、一般書としても遜色ない一冊である。[金相美]
2012/01/15(日)(SYNK)