artscapeレビュー
ヤマガミユキヒロ展「Sheltering Sky」
2012年01月15日号
会期:2011/11/29~2011/12/11
Gallery PARC[京都府]
キャンバスに建物や道路だけを描いた無人の都市の風景に映像をプロジェクションし、時間や光が移りゆくさまを表現する「キャンバス・プロジェクション」はヤマガミユキヒロがこれまでにも展開してきた作品シリーズ。今回の個展では、鉛筆で描いたタブローによるこのシリーズの新作が発表された。白いキャンバスに鉛筆の線のみで描かれたモノクロームの無人の風景に、繁華街を往来する人々や車、移り変わる空の様子などの映像が重なるそれは、以前の作品よりもうんと透明感があり、流転する世界の混沌と儚さがいっそう感じられる印象であった。うるさいほどにネオンサインが瞬く街の夜や、それらの灯りが消えたときの高層ビルの隙間に見える空、移ろいゆくその光景が美しい。色彩を削ぎ落とすというヤマガミの今回の試みは、彼が表現したいものをこれまでよりもずっと鮮明に示していたし、なによりも見ていて気持ちのいい感覚だった。これからまた楽しみだ。
2011/12/08(木)(酒井千穂)