2024年03月01日号
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artscapeレビュー

サウダーヂ

2012年01月15日号

会期:2011/10/22~2011/11/25

ユーロスペース[東京都]

山梨県甲府市を舞台にした群像劇。土方と移民とラップを中心に、薬物、売春、差別、政治、経済、労働などの社会的問題を巻き込みながら、出口のない閉塞感と空洞感を描き出す。画面の随所に現われるのは、シャッター通りと化した商店街や、さまざまな移民コミュニティ、そして国粋化してゆく若いラッパーたち。疲弊した地方都市の暗部を淡々と見せつけるリアリズムが凄まじい。この映画で描かれているような、周縁に追いやり、追い詰め、やがてほんとうに消してしまうほど人間を逼迫させる社会は、一昔前までであればどこか遠い国の過酷な現実として受け止めていたが、いまはちがう。程度の差こそあれ、グローバリズムのしわ寄せは、いまや日本中の街という街に及びつつあるからだ。しかも、一向に出口が見えないがゆえに、アルコールや薬物に救いを求め、安全な自室に閉じこもり、外国への逃避を画策し、やり場のない攻撃性を身近な他者に向けるというあがき方も、おそらく現代社会に顕著な病なのだろう。安易な希望や処方箋を示すことなく、感傷的な文学性に流されることもなく、徹底して地方都市と人間の模様を粘り強く描いた、おそろしい映画である。

2011/11/21(月)(福住廉)

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