artscapeレビュー

吉永マサユキ「SENTO」

2012年01月15日号

会期:2011/12/06~2011/12/26

GALLERY SHUHARI[東京都]

吉永マサユキのデビューは、在日外国人たちの生に肉迫した1999年の写真集『ニッポンタカイネ』(メディアファクトリー、東京キララ社から再刊)なのだが、それ以前に撮影していたのがこの「SENTO」のシリーズである。撮影は1993年だが、それ以前のアナーキーな不良少年の頃から、十三周辺の銭湯は仲間たちとの溜まり場になっていたのだという。ささくれた日々にふっと訪れる慰安があったことが、肌と肌を触れ合うような至近距離で撮影された写真からいきいきと伝わってくる。吉永にとっての原点ともいえる写真群ではないだろうか。それにしても、これだけ「おちんちん」がまともに出ている写真展も珍しい。日本の写真展や写真集では、自己規制も含めて「おちんちん」を隠してしまうことが多いが、それにはなんの法的な根拠もないはずだ。いわゆる「わいせつ写真」なら、男性性器は性的な意味合いを帯びてくるのだが、銭湯ではまずそんなことはありえない。むしろ。ここに登場してくる「おちんちん」たちは、風呂のお湯の中をゆらゆらと漂い、石鹸の泡に包まれて愛らしくまったりと弛緩していて、いつもの攻撃性はまったく影を潜めている。それは男性なら誰でも身に覚えのある光景だし、女性でもそれほど違和感なく受け入れることができる存在なのではないだろうか。愉快で、ちょっと哀しげな彼らの姿を、じっくりと見ることができただけでも、とてもいい展示だったと思う。なお展覧会に合わせて、東京キララ社から同名の写真集(英文表記)が発売されている。

2011/12/07(水)(飯沢耕太郎)

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