artscapeレビュー
細倉真弓 写真展「KAZAN」
2012年01月15日号
会期:2011/12/02~2012/01/15
G/P GALLERY[東京都]
細倉真弓は1979年生まれ。2005年に日本大学芸術学部写真学科を卒業後、内外のグループ展に参加するなど順調にキャリアを伸ばしてきた。やや意外なことに、今回がはじめての個展になる。「KAZAN」のシリーズはポートレート、ヌード、風景、結晶体のようなオブジェなどの組み合わせ。あまり声高に自己主張することなく、やや押さえ気味に、どこかくぐもった陰鬱な雰囲気の写真を並べている。根こそぎに横倒しになった樹の近くに人物を配した風景など、手探りで心に響くリアリティを見出していく姿勢がストレートに表われている写真が多く、写真家としての成熟を感じた。以前の彼女の写真には勢いはあったものの、どこか「急ぎ過ぎ」ていて、肝腎なものを取り落としているようなところもあったのだ。着実に自分の作品世界をつくり上げつつあるのではないだろうか。もうひとつの新作は、アルミニウム板にポートレートや静物を焼き付けたシリーズ。こちらは19世紀に流行した着色ティンタイプを思わせる、やや古風な雰囲気だ。悪くはないのだが、2つのシリーズのつながりがうまく見えないので、見る側は混乱してしまう気もする。それでも彼女の表現力が、さまざまな手法を自在に使いこなせる段階に達していることはわかった。なお、アートビートパブリッシャーズから同名の写真集も刊行されている。
2011/12/04(日)(飯沢耕太郎)