artscapeレビュー

ビリー・アキレオス

2012年01月15日号

会期:2011/11/23~2011/12/14

ルイ・ヴィトン表参道店[東京都]

イギリス人のアーティスト、ビリー・アキレオスが、ルイ・ヴィトンのバッグやベルトでつくった小動物のオブジェを、ルイ・ヴィトンの店内で見せた。2010年、アーティストの岡本光博による《バッタもん》に一方的にクレームをつけて展覧会から撤去させながら、外国人アーティストにほぼ同じような作品を制作させたところに、ラグジュアリーブランドならではの図太い神経が見え隠れするが、それはともかく問題の焦点は作品が優れているかどうかの一点に尽きる。展示されたのは、熊やカメレオン、アルマジロなど。そのなかで、まさしくバッタをモチーフにした作品が、エントランス脇のもっとも目立つ場所に展示されていた。岡本の《バッタもん》と比較してみると、甲乙つけがたいというより、その質的な差が歴然としていることは誰の眼にも明らかだ。《バッタもん》が最低限のパーツによってひじょうに合理的に造形化されていたのにたいし、アキレオスのバッタは無駄なパーツが多すぎるため、フォルムの美しさに欠けるばかりか、機械的というか、文字どおり不細工な造形である。クリエイションの根底において、前者の重心がバッタにある反面、後者はバッグを重視していると言ってもいい。余計なお世話だろうが、もう少し審美眼を磨いたらどうだろうか、と言っておきたい。

2011/12/03(土)(福住廉)

2012年01月15日号の
artscapeレビュー