artscapeレビュー
物質と彫刻──近代のアポリアと形見なるもの
2013年05月15日号
会期:2013/04/02~2013/04/21
東京藝術大学大学美術館陳列館[東京都]
藝大彫刻科主催の企画展。1997年に始まり今回8回目というから、約2年にいちど開いてきたわけだ。まず入って右の部屋には、角田優の放射線を感知して視覚化する装置が置いてある。この装置自体を彫刻と見るか、宙を行き交う放射線を彫刻行為ととらえるか、視覚化された放射線を彫刻とするか。なーんて考えながらしばらく見ていたが、なんの変化もなかったので放射線は検出されなかったようだ。故障してたのかも。福島にもっていけばもう少し活躍するかもしれない。宮原嵩広の《リキッド・ストーン》は、表面に透明樹脂を塗った4枚の正方形の大理石を床に並べたもの。台座のようでもあるが、床に置いた額縁絵画にも見えなくはない。そのうちの2枚は中央に穴が開き、乳白色のシリコンが満ちたり引いたりしている。これはちょっと揺さぶられるなあ。森靖による木彫のサンタクロースみたいなおっさん像もすごい。よく見るとヒゲの下から巨大なペニスが生え、突き上げた両親指は乳房になり、脚は4本も生えている(これは安定を保つため?)。こういう陽気でキッチュでグロテスクな彫刻ってあまり見ないなあ。オイルの匂いが漂う2階には袴田京太朗による「複製」シリーズが並んでいる。これはバットや布袋さまの置物をいくつかに分割し、欠けた部分に色鮮やかなアクリル板を補って再生したもの。つまりクローンのように同じようなもの(材質は違う)を増やしてるわけだ。遺伝子再生にまで思いが飛ぶ。いちばん奥の部屋には匂いの発生源である原口典之のオイルプールがドーンと置かれている。表面が一分の狂いもなく水平を保ち、圧倒的迫力。もう何度も見ているのにあらためて感心してしまう。同展はタイトルともどもこの作品のために企画されたといっても過言ではないだろう。
2013/04/03(水)(村田真)