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村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

2013年05月15日号

発行日:2013/04/12

村上春樹の小説『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を読む。文体、比喩、形式、寓意と相変わらずの物語力である(これを謎解きのミステリーとして追いかけると、はぐらかされるだろうが)。今回は特に舞台となる名古屋ネタと主人公の駅設計業も楽しめた。ともあれ、本書では死ぬような思いをして生き残った主人公が、唐突に失われた共同体=美しい色のハーモニーをめぐって封印された過去/記憶と向きあい、未来に歩きだそうとする。はっきりと3.11には言及しないが、震災後文学でもある。

2013/04/20(土)(五十嵐太郎)

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