artscapeレビュー
三好彩 個展「火」
2013年05月15日号
会期:2013/03/09~2013/04/13
画面を走るように行き交う黒、白、グレー、赤、青などの色彩。怪物のような、動物のような、正体不明の生き物や内臓を想像させる不気味なモチーフ。厚く塗られた絵の具の重量感。奇怪なイメージとエネルギッシュな筆跡の迫力が凄い。はじめはちょっと気味が悪いなあと思いながら見ていたのだが、一点ずつを見ていくうちにその奇妙な夢のような作品世界の魅力にすっかり引き込まれてしまった。三好は、時折、自分の心や体に感じる違和感や恐怖感、不安感、そしてそれらの感覚にともなって見えることがあるイメージを絵画で表現しているのだという。それらのイメージは、はっきりせず曖昧な場合も多いのだが、記憶を頼りに色や形態を描いているのだそうで、画面にうかがえる筆致のスピードも作家のリアルな感覚と臨場感に溢れていた。とてもエキサイティングで印象的に残る。今後の活躍が楽しみだ。
2013/04/12(金)(酒井千穂)