artscapeレビュー
LOVE展──アートにみる愛のかたち
2013年05月15日号
会期:2013/04/26~2013/09/01
森美術館[東京都]
地下鉄日比谷線の吊り広告にジェフ・クーンズのパクリを発見! と思ったら、六本木ヒルズ10周年の広告で、その記念として開かれる森美術館の「LOVE展」の出品作品、つまりホンモノだった。広告をアートに採り込んだジェフくんの作品を再び広告に利用するとは、さすが森美術館もしたたかっつーか、なんかタヌキとキツネの化かし合いのような気がしないでもない。さて、「ラヴ」といえば恋愛から家族愛、郷土愛、人類愛、そしてセックス、心中、別れまで含めてこれまでつくられた美術品の大半、とはいわないまでも2~3割は「愛」がテーマだといえるのではないか。極端な話なんでも「愛」に結びつけることができるし。だから第1章では広告にも使われたジェフ・クーンズをはじめ、デミアン・ハースト、ジム・ダインらのハート形の作品や、ロバート・インディアナやバーバラ・クルーガーらの「LOVE」の文字を使った作品を集めて、いかにも「LOVE」らしさを強調しなければならなかったのだ。まあテーマなんかどうでもいいわけで、問題はどれだけいい作品と出会えるかだ。おとぎ話に秘められたエロスを刺繍で表現したチャン・エンツー、白人女に迫られコンドームを手にする日本男児を浮世絵風に描いた寺岡政美の《1,000個のコンドームの物語/メイツ》、ラブドールを使ったローリー・シモンズの写真などは優れた選択だと思うし、ジョン・コンスタブル、デ・キリコ、フランシス・ピカビア、フリーダ・カーロ、デイヴィッド・ホックニーらの「古典的絵画」もこんなところで見られるとは思わなかった。別れた男に復讐するTANYの映像《昔の男に捧げる》を見ていたら、横に主演の会田誠が立っていたのも森美術館のオープニングならではのこと。さて、開館記念展が「HAPINESS」、10周年が「LOVE」と来たら、20周年は「PEACE」か、それとも「DEATH」か。まあそれまで美術館が存続していることを祈りたい。ぼくもそれまで生きていたいデス。
2013/04/25(木)(村田真)