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伊達伸明 展「ウクレレとウモレギ」、トークイベント「夜話:ほりおこすこと」

2013年05月15日号

会期:2013/04/16~2013/04/28

アートスペース虹[京都府]

取り壊される建物を素材にウクレレを制作している伊達伸明の個展。今展では、昨年度仙台で開催された「亜炭香古学」というイベントの活動報告とともに、大阪の旧フェスティバルホールの建材から制作された《旧フェスティバルホール》ウクレレ、大正時代に建てられた駅舎から制作された《JR灘駅》ウクレレなど、7本が展示された。ウクレレはどれも誰かの手が触れた痕跡の残るものばかりでそれぞれの個性と建物にまつわるドラマが満載。毎回その凝ったつくりに感心してしまうのだが、特に今回は《フェスティバルホール》が凄かった。ボディ表板には、ステージの床材、裏板には反響板、内部にはロビーの大理石(の柱)などまで使われている。指揮台の赤いマットを中敷きに用いたハードケースも、旧フェスティバルホールに親しんだファンにはさぞたまらない一品だっただろう。20日の日曜日には、仙台市市民文化事業団の薄井真矢さんとのトークイベントも行なわれた。内容は今回展示されたウクレレ制作のエピソードと、亜炭に注目し開催された仙台での「亜炭香古学」のイベントのレポートがメイン。「亜炭」がなんなのかも今展まで知らなかった私だが、古代の樹木が火山による噴出物などで埋められ炭化してできたもので、戦後の仙台市内ではごく一般的に使用されていた燃料だという。現在では採掘されることも禁じられ、それを知っているのは65歳以上の高齢者ばかりだとのこと。「亜炭」にまつわる情報、思い出などが続々とお年寄りたちから寄せられ、大盛況であったという話も興味深いものだった。そういえば、このプロジェクトの過程を新聞にした伊達さん手作りの「亞炭香報」もユニーク。「亜炭香」の作り方を記載した号や、市民から寄せられたエピソードやアンケートが載っている号など、絵も内容も素晴らしい。「亞炭香報」はこちらでもダウンロードできる。http://www.sendaicf.jp/machinaka2012/blog/date/


トークイベント「夜話:ほりおこすこと(薄井真矢×伊達伸明)」


展示風景

2013/04/20(日),2013/04/28(日)(酒井千穂)

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