artscapeレビュー
桂ゆき展──ある寓話
2013年05月15日号
会期:2013/04/06~2013/06/09
東京都現代美術館[東京都]
大正末の女学生時代のスケッチから、平成初期の遺作まで、60余年におよぶ彼女の画業はすっぽり昭和という時代を包み込む。スッゲ。もっとスッゲーのは、彼女の作品からは昭和美術史の香りがあまり感じられず、彼女の3本柱ともいうべき「細密描写」「コラージュ」「戯画的表現」がひたすら繰り返されていることだ。とくに感心するのは細密描写とコラージュの関係で、戦前にはコルクのコラージュと、それを克明に描いたトロンプ・ルイユ(騙し絵)のような細密描写もある。ほかにも布地や新聞紙などがコラージュと見まがうような細密描写で描かれていて、両者は補完的な関係にあったようだ。わからないのは童画チックな戯画的表現で、細密描写の絵に突然ポコンと人の顔や目玉が現われたりするのでズッコケてしまう。これがなければもっと高く評価されただろうに。と思うのはモダニズムに毒されてる証か。
2013/04/05(金)(村田真)
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