2019年12月01日号
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artscapeレビュー

水谷太郎「new journal」

2013年12月15日号

会期:2013/11/01~2013/11/23

Gallery916 small[東京都]

操上和美の「PORTRAIT」展を開催中のGallery916に付設する小スペースで、水谷太郎の作品を見ることができた。水谷は1975年、東京都出身。東京工芸大学卒業後、主にファッションや広告の分野で活動している。今回が初個展だそうだが、写真家としての能力の高さを感じとることができたのが収穫だった。
展示されているのは、どれも最近撮り下ろしたという3つのシリーズである。「White Out」は、アメリカ・カリフォルニア州を中心に撮影された路上の看板の写真(18点)。タイトルが示すように、それらの看板は白く(あるいはグレーに)塗りつぶされている。何かメッセージが描かれる前の「空白」は、被写体として心そそられるだけでなく、「意味」を消失した現代の社会状況を暗喩的に指し示しているようにも見えなくはない。「New Wilderness」は2枚ずつ対になった風景写真のシリーズ(10点)。撮影されているのは沼、森、火山地帯の岩などだが、水面への映り込みと水中の水草とを多重露光のように捉えたり、写真を逆さに展示したりといった微妙な操作を加えている。ここでも、現代社会における自然観の変容のあり方が、彼の心を捉えているということだろう。それに加えて1点だけ、本業のファッション写真として撮影された、UNDERCOVERのTシャツ(TIME OF RAGEというメッセージが発光LEDで描かれている)を身につけた若者の写真が展示してあった。
関心の幅の広さと、映像化のセンスのよさは、この世代の写真家たちのなかではかなり高度なレベルまで達している。次はテーマの絞り込みと深化が大きな課題になってくるはずだ。

2013/11/01(金)(飯沢耕太郎)

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