2019年12月01日号
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artscapeレビュー

田代一倫「はまゆりの頃に 2013年春」

2013年12月15日号

会期:2013/11/06~2013/11/24

photographers’ gallery/ KULA PHOTO GALLERY[東京都]

2011年4月から続けられていた田代一倫の「はまゆりの頃に」の東北行脚は、今回の展示で一区切りということになりそうだ。この欄でも何度か言及したように、被災地を含む東北各地でたまたま出会った人たちに声をかけ、正面向きのポートレートを撮影するという、ある意味「愚直な」やり方を貫くことで、あまり類を見ない独特の肌合いを持つ作品が成立してきた。撮影人数はのべ1200人にのぼるそうだが、そのことだけでも気の遠くなるようなエネルギーが費やされている。にもかかわらず、写真から発する気分はとても穏やかで柔らかいものだ。これはやはり、撮り手の田代の人柄が反映しているということだろう。本作が2013年度のさがみはら写真新人奨励賞を受賞したのも当然と言える。
なお、今回の展示にあわせて写真集『はまゆりの頃に 三陸、福島2011~2013年』(里山社)が刊行された。全488ページ、掲載写真453点。社員ひとりだけという小さな出版社が「ずっと残したい本だけを出版する」ことを目指して設立され、本書がその最初の出版物になる。ずっと田代の展示を見続けてきた観客のひとりとして、このようなクオリティの高い写真集に仕上がったことを心から祝福したい。
あらためてページを繰ってみて、このシリーズが、写真だけでなくその下に添えられた言葉(キャプション)によっても支えられていたことがよくわかった。
「『自宅の2階に、津波で流された方の遺体が挟まっていました』
被災した方と会話し、撮影したのは、この方が初めてでした。瓦礫を前にして私はどこかテレビ映像のように感じていましたが、彼女のこの言葉で、目の前の風景が突然、現実となって押し寄せて来ました。」
写真集の最初の写真に付されたキャプションである。ここにも写真と同様に、身の丈にあった言葉を手探りで、誠実に掴みとり、記していこうという「愚直な」姿勢がしっかりと貫かれている。

2013/11/15(金)(飯沢耕太郎)

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