2019年12月01日号
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artscapeレビュー

アナト・パルナス「夜気:Stillness of Night」

2013年12月15日号

会期:2013/11/05~2013/11/18

新宿ニコンサロン[東京都]

アナト・パルナス(Anat Parnass)は、1974年、イスラエル・テルアビブ出身の写真家。1995年、20歳の時に初めて東京を訪れ、驚きと懐かしさとを同時に感じたことが忘れられず、大学で日本学を学び、2006年に再来日する。文部科学省の国費留学生制度で日本大学芸術学部写真学科に入学し、2013年に同大学大学院博士課程を修了した。博士論文のテーマは「日本における現代女性写真の研究」である。
今回展示されたのは、彼女が2006年以来撮り続けている、東京とその周辺の夜の景色を撮影した写真群(34点)である。闇の中で息づいている植物たち、灯りに照らし出されて浮かび上がる建築物、どこからともなく湧き出してくる輪郭が定かではない人物たち、夜空に大きく広がる花火──被写体はとりたてて特異なものではないが、それらのすべてが「夜気」に包み込まれることで、どこかアニミスティックな化け物じみた存在に変容し始めているように感じる。このようなミステリアスな影絵芝居を思わせる眺めは、むろん東京に短期滞在している旅行者には撮影不可能だが、逆に日本に生まれ育った者にとってもエキゾチックな光景として見えてくるのが面白い。東京在住の「外人」という、宙吊り状態の彼女の立場をうまく活用して撮り続けていくと、このシリーズのさらなる展開が期待できそうな気がする。
なお展覧会にあわせて、作品20点をおさめた同名の小冊子も刊行された。

2013/11/05(火)(飯沢耕太郎)

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