2019年12月01日号
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artscapeレビュー

ジョセフ・クーデルカ展 Retrospective

2013年12月15日号

会期:2013/11/06~2014/01/13

東京国立近代美術館[東京都]

1938年、チェコスロヴァキア出身のジョセフ・クーデルカの日本では最初の本格的な回顧展である。初期作品から「ジプシーズ」(1962~70)、「エグザイルズ」(1970~94)、「カオス」(1986~2012)などの代表作、さらに新作の「Lime(石灰岩)」(2012)まで、300点以上の作品が並ぶ展示は圧巻だった。現代の写真家のなかで、実力、ヴィジョンともに抜きん出た存在であることを見せつける展示だったと思う。
特に興味深かったのは、初期の実験的な作品(1958~64)と、プラハの劇場のために撮影した舞台写真(1962~70)のパートだった。クーデルカは本格的に写真を撮影するようになってからすぐに、ハイコントラスト画像、グラフィック的な効果を活かした単純化や抽象化、いわゆる「アレ・ブレ・ボケ」などの、反写真的な手法を積極的に使った作品を制作していた。これらは後年のドキュメンタリー的な写真とはかなり肌合いが違っている。クーデルカがスタイルを変えたというよりも、「エグザイルズ」や「カオス」の緊密でダイナミックな画面構成の能力が、これらの実験の積み重ねから形をとっていったことがよくわかった。
もうひとつ、これはちょうど上階のコレクション展に森山大道や土田ヒロミの1960~70年代の写真が並んでいたことで気づいたのだが、クーデルカと日本の写真家たちの作品世界には共通性があるように思える。自らの身体性を介した被写体へのアプローチ、常に揺れ動く視点の取り方、祭りや民間儀礼など劇場的な空間に対する強い関心など、かなり似通っているのではないだろうか。クーデルカがジプシーたちを撮影していたのと同じ頃に内藤正敏、須田一政、土田ヒロミ、北井一夫、山田脩二らも、日本各地を移動しながら土俗的な「ムラ」の習俗にカメラを向けていた。まだ明確にその差異と共通性を論じるまでには至っていないが、今後の課題になりそうだ。

2013/11/06(水)(飯沢耕太郎)

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