artscapeレビュー
KABEGIWA第12回展「掲示」
2013年12月15日号
会期:2013/11/25~2013/12/07
日本大学藝術学部江古田校舎西棟地下1階美術学科彫刻アトリエ前廊下[東京都]
日芸の彫刻アトリエの前の廊下にあるいくつかの掲示板を使った展示。校舎内に入るにはチェックが必要だが、廊下は個々のアトリエより公的性格が強く、不特定多数が行き交う空間。そこにある6面の掲示板がギャラリーだ。これは日芸に勤務する冨井大裕が、「絵画にホワイトキューブは必須か?」との問いにみずから「否!」と答えたうえで、それを検証するために企画したもの。掲示板はキャンバスでいうと300号とか500号の大きさがあり、表面に布が張られ、周囲に枠がはめられている。つまり掲示板自体、絵画形式とよく似ているのだ。なので、参加作家は絵画から出発した6人のアーティスト。絵具てんこ盛りの油絵を出した水戸部七絵は、もっともオーソドックスな展示だが、掲示板に貼り出す物件としては反則並みに出っ張っていた。細長い紙片をハトメで止めていった豊嶋康子は、与えられた掲示板というフィールドそのものを主題としつつ、一部がフィールドをはみ出していた。もっとも感心したのは末永史尚の《掲示》。絵画はひとつのイメージとして把握されるのではなく、さまざまな距離、いろんな角度から見た経験の総体として表象されるものであることを、掲示板に貼ったポスターを距離を変えて撮った写真によって示している。掲示板という与えられた条件を素材と主題に反転させ、なおかつ絵画の本質的な問題にまで迫っている。
2013/11/29(金)(村田真)