artscapeレビュー
若江漢字「鏡界─転覆と反転」
2013年12月15日号
会期:2013/09/28~2013/11/02
ユミコチバアソシエイツ[東京都]
若江漢字といえば、70年代におもに写真を用いて知覚と認識をめぐるコンセプチュアルな作品をつくっていたが、ドイツ滞在を機に80年代にはヨゼフ・ボイスに傾倒、90年代には横須賀にカスヤの森現代美術館を開設するなど、多彩な活動を展開してきた。でもその間ずっと作品を制作していたとは知らなかった。ティントレット《スザンナの水浴》や、プッサン《アルカディアの牧人たち》といったいわくありげな絵を引用したり、鏡を使った一見トリッキーな写真をとおして「見ること」の迷宮を楽しんでいる。こうしたデュシャン的コンセプチュアルアートに澁澤龍彦的マニエリスムを加えたペダンチックな70年代的テイストは、けっこう嫌いではない。
2013/11/01(金)(村田真)