2019年12月01日号
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artscapeレビュー

インベカヲリ★「やっぱ月帰るわ、私。」

2013年12月15日号

会期:2013/10/29~2013/11/04

新宿ニコンサロン[東京都]

インベカヲリ★が、前回新宿ニコンサロンで個展を開催したのは2007年だった。その展示はよく覚えている。弾の飛び交う現代社会の戦場の最前線で、体を張って撮影を続ける女性写真家がまた登場してきたという印象を強く抱かせる、鮮烈なデビューだった。
それから6年あまり、インベは撮影を続け、今回の個展と赤々舎からの同名の写真集の出版にこぎつけた。モデルはすべて女性たち、彼女たちのうちに潜む衝動を全身全霊で受けとめ、共同作業のようなやり方でそのパフォーマンスを記録していくやり方に変わりはない。ただ作品化のプロセスが、より批評的でロジカルに突き詰められてきている。彼女たちの「怒り」の表出が、単純な感情表現に留まることなく、確実に政治的なメッセージとして提示されているのだ。「暮らしに安心」「社会を明るくしよう月間」「支え合う日本」といった空々しい標語、「グラドル自殺」といった新聞記事、セーラー服や下着といった男性によって消費されていく性的な表象──それらが捨て身のエロス的なパフォーマンスと合体して次々に開陳されていく様は、圧巻としか言いようがない。インベは写真集の後記にあたる文章で、なぜ女性を撮影するのかという問いかけに自ら答えてこう書いている。
「男性の場合は、被写体となることに明確な理由をもち、完成された姿を見せたがる。逆に女性はもっと柔軟で、自分を客観視したい、違う角度から見たい、何か自己主張したいときなどにカメラの前に立つ感性をもっている」
これは本当だと思う。いまや、女性の方が自己を冷静に客観視してカメラの前に立つ勇気を持ちあわせているわけで、インベのような表現のあり方は、これから先にもさらに勢いを増してくるのではないだろうか。
なお同展は2014年3月13日~19日に大阪ニコンサロンに巡回する。また、2013年11月20日~12月1日には、同名の展覧会(展示作品は別ヴァージョン)が東京・都立大学のTHERME GALLERYで開催された。

2013/11/02(土)(飯沢耕太郎)

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