artscapeレビュー
リッタ・パイヴァラネン「River Notes」
2015年05月15日号
会期:2015/04/11~2015/05/02
フィンランドの写真家たちの作品は、日本人にはとても親しみを感じるものが多い気がする。YUMIKO CHIBA ASSOCATESで、同じくフィンランド人の写真家、アリ・サールトの展示に続けて開催された、リッタ・パイヴァラネンの「River Notes」展を見て、あらためてそう思った。
パイヴァラネンは1969年生まれ、ヘルシンキ在住の女性アーティストで、森の中に布の帯を張り巡らして撮影する作品を制作し続けている。川に沿って歩き回って、「最も良い視点」を探し求め、古着や古布をつなぎ合わせた長いリボンのようなオブジェを、樹々の枝に結びつけたり、垂れ流したり、花のように開いて「縫い付け」たりする。春や秋の、葉が落ちて「風景のかたちや構造がより見えるように」なった季節を選び、布の色を周囲の風景と調和させ、時には防水ズボンを履いて川の中に入り込んでベスト・ポジションを探すことで、作家と自然との一体化がより強まっているように感じる。その自然との間に細やかな共感を育てていく姿勢が、日本のアーティストたちとも共通しているように感じられるのだ。
フィンランドの写真家たちは、ヘルシンキ芸術デザイン大学出身者たちの「ヘルシンキ・スクール」の存在が広く知られるようになって、世界的に注目を集めつつある。写真集や展覧会を通じて、積極的に自分たちのスタイルをアピールしていく姿勢は、日本の若い写真家たちにも参考になるのではないだろうか。
2015/04/11(土)(飯沢耕太郎)