artscapeレビュー

試写『沖縄 うりずんの雨』

2015年05月15日号

会期:2015/06/20よりロードショー

「うりずん」とは琉球語で冬が終わって大地が潤い、草木が芽吹く時期を指すらしい。ちょうど70年前、米軍が沖縄に上陸した季節がそうだった。この映画は、日米のあいだで翻弄され、抑圧されてきた(それは意外にも160年以上も前のペリー来航時に始まり、そしていまでも続いている)沖縄の姿をさまざまな立場の人たちの証言によって浮き彫りにしていく。沖縄で戦った元米軍兵士や元日本軍兵士、元県知事の太田昌秀をはじめ地上戦で生き残った住民たち、辺野古への基地移転賛成派および反対派、そして戦後、沖縄駐留中にレイプ事件を起こして“珍しく”日本で裁かれた元米兵もインタビューに応えている(ただし3人のうち1人だけだが)。もちろんインタビュー映像だけでなく、アメリカ国立公文書館所蔵の記録映像も交え、また現在の米軍内の女性兵士に対するセクハラ問題にまで撮影対象を広げている。これほど視野が広くフトコロが深いのは、監督が『チョムスキー9.11』『映画 日本国憲法』などを撮ってきたアメリカ人ジャン・ユンカーマンだからだ。2時間28分はいささか欲ばりすぎという気がしないでもないが、ものたりないよりはるかにいい。ちなみに今日はたまたま安倍首相と翁長知事の初会談の日……。

2015/04/17(金)(村田真)

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