artscapeレビュー
三井の文化と歴史
2015年05月15日号
会期:前期:2015/04/11~2015/05/06、後期:2015/05/14~2015/06/10
三井記念美術館[東京都]
三井記念美術館では三井文庫の開設50周年と三井記念美術館の開館10周年を記念して、春と秋に特別展が開催される。春季の前期展示は「茶の湯の名品」と題して、三井家に伝わってきた茶道具の名品──おもに北三井家六代高祐と室町三井家十代高保の蒐集品──と、三井家の当主や夫人が描いた絵画や書、手造りの茶道具など、「旦那芸」として制作されたにしてはとても質の高い書画、工芸が展示された(2015/4/11~5/6)。後期展示は「日本屈指の経営史料が語る三井の350年」(2015/5/14~6/10)。三井文庫が所蔵する17世紀半ばから20世紀までの経営史料、文書類、絵画などによって、三井350年の経営が紹介されているほか、三井文庫のアーカイブ活動、研究活動が紹介されている。吉川容・三井文庫主任研究員によれば、本展では三井文庫が所蔵する生の歴史史料を見せると同時に、史料を用いた歴史叙述のプロセスを見せ、また史料を残すことの大切さと史料館が果たす役割を伝えたいとのこと。三井文庫は公開されているとはいえ、事業の歴史に沿って体系的に史料を見せる機会はこれが初めてだという。経営史、経済史を学ぶ者ばかりではなく、歴史に関心がある人にはいずれも興味深い展示物であると思う。解説パネルはとてもわかりやすいが、近世の実物史料は古文書になじみのない人にとっては(私もだが)難しいので、音声ガイドの解説が参考になる。また本展に合わせて『史料が語る三井のあゆみ──越後屋から三井財閥』(吉川弘文館、2015)が刊行されている。同書は三井の歴史を50のテーマに分け、ひとつのテーマをひとつの見開きでわかりやすく解説しているほか、三井文庫の歴史も紹介されており、これも展示を見るうえで大いに参考になる。[新川徳彦]
2015/04/10(金)/2015/05/13(水)(SYNK)