artscapeレビュー

山本昌男『小さきもの、沈黙の中で』

2015年05月15日号

発行所:青幻舎

発行日:2014年12月10日

やや前に刊行された作品集だが、山本昌男の新作を取り上げておきたい。山本はどちらかといえば、日本より欧米諸国で評価の高い写真家で、小さいプリントを、「間」を意識しながら、撒き散らすように貼り付けていくインスタレーションで知られている。だが、日本では展覧会を見る機会はあまりなく、アメリカのNazraeli Pressなどから刊行されている写真集も、少部数であるだけでなく絶版になっているものが多い。その意味で、今回青幻舎から代表作をおさめた作品集が刊行されたのは、とてもよかったと思う。
「混沌」、「静謐な気」、「逍遥」、「構築された光」、「超空間時間」、「浄」の6部で構成された作品の並びは、とても注意深く考えられており、ほぼ実物大の写真のレイアウトの仕方に、独特のリズム感がある。山本が書いた序文にあたる文章に、彼の制作の姿勢がよくあらわれているので、引用しておくことにしよう。
「見過ごされそうな小さな物や些細な出来事を発見した喜び、ボタンのかけ違いのような感覚、思わず入り込んでしまった霞の中で立ち位置を失った瞬間などに強く興味を引かれ、こだわってきたことではないかと思っています。[中略]私の作品から、有るのか無いのか分からないくらいの微かな電磁波のようなものが発せられて、弱いけれど弱いからこそ強いメッセージとなり、皆様に届くように願っています。」
こんな写真家がいるということを、ぜひ知ってほしいと思う。

2015/04/27(月)(飯沢耕太郎)

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