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ふたたびの出会い 日韓近代美術家のまなざし──「朝鮮」で描く

2015年05月15日号

会期:2015/04/04~2015/05/08

神奈川県立近代美術館葉山[神奈川県]

20世紀前半の日本の支配下にあった「朝鮮」の美術に焦点を当てた労作。当時は美術を指導するため多くの日本人画家が半島に渡ったため、在「朝鮮」日本人画家の作品が過半を占める。その日本人の作品は「朝鮮」の風俗をエキゾチックに描き出したものが多く、いわゆるオリエンタリズムといえるが、その日本人に学んだ韓国人の絵もオリエンタリズムに染まっていたりする。また在「朝鮮」日本人画家には知らない名前が多いと思ったら、戦後日本に引き上げてきた彼らは山口長男らわずかな例外を除いて不遇をかこったらしい。いわば差別していた側が差別される側に転換したのだ。さらに戦後半島が南北に分断されると、北へ向かう韓国人画家も出てきた。戦後来日(密航)して活動した後、北朝鮮に渡って消息を絶った良奎(チョ・ヨンギュ)もそうだ。の名はしばしば戦後の日本美術史に出てくるけど、作品をまとめて見るのは初めて。このように展示は第2次大戦で終わることなく戦後もしばらく続き、美術を軸にした日韓関係の複雑さをあらためて認識させられる。正直かなり疲れる展覧会だが、渡仏前の藤田嗣治の《朝鮮風景》、抽象以前の山口長男の風景画など珍しい作品も出ている。余談だが、カタログに寄せた李美那さんの「日本の近代美術には、韓国が直面してきた喪失感、矛盾、そして特に抵抗という要素に対応するものが弱い。(…中略…)韓国の美術家にくらべたときそれは、組織的・構造的な力を欠いており、意識/無意識を問わず支配者の目線に自らを置きがちな傾向があることは否めない」(「日韓近代美術──二重性を超えて」)との言葉にはグサッと来た。

2015/04/04(土)(村田真)

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