artscapeレビュー
ヴァチカン教皇庁図書館展II──書物がひらくルネサンス
2015年05月15日号
会期:2015/04/25~2015/07/12
印刷博物館[東京都]
紙の印刷からコンピュータへと情報メディアが大きく変換している現在、印刷博物館でヴァチカン教皇庁図書館展が開かれることはなにか象徴的な意味があるに違いない。なーんて深読みしたくなる。ヴァチカン教皇庁に図書館が設立されたのはルネサンス全盛期の15世紀なかばのこと。ちょうど印刷術の発明と同じころだから、書物のビッグバンとともに成長を遂げてきたことになる。出品はさまざまな言語の聖書をはじめ、ヘロドトス『歴史』、プリニウス『博物誌』、ウィトルウィウス『建築書』、デューラー『黙示録』、ユークリッド『幾何学原論』、トマス・モア『ユートピア』、ゲスナー『動物誌』など垂涎ものばかり。日本語があると思ったら、「天正少年使節からヴェネツィア共和国政府への感謝状」だった。それにしても西洋の書物というのは書体も文字組みも挿絵も美しいこと。こうした古書に惹かれるのは、そこに書かれてる内容もさることながら(ていうか読めないし)、文字や絵が記された紙の束という形式ゆえであり、硬い表紙にくるまれた四角い物体の存在感に負うところが大きいだろう。いってしまえばフェティシズムの対象なのだが、それは絵画も同じで、いくらディスプレイ上で画像が見られるようになってもタブローはなくならないはず。人類は表面になにか書かれた四角い物体が本来的に好きなのだ。
2015/04/24(金)(村田真)