artscapeレビュー
横尾忠則 幻花幻想幻画譚
2016年01月15日号
会期:2015/12/12~2016/03/27
横尾忠則現代美術館[兵庫県]
瀬戸内晴美(寂聴)が1974~75年に新聞連載した時代小説『幻花』。横尾忠則が担当した同作の挿絵原画371点を、はじめて一堂に展示したのが本展である。小説は室町幕府の衰退を一人の女性の視点から綴ったものだが、横尾は彼らしい自由奔放なスタイルで挿絵を制作。映画のように同じ場面を少しずつ変化させていくかと思えば、キリスト、UFO、瀬戸内自身を登場させる、原稿が出来上がる前に挿絵を描いてしまうなど、実験的な手法を次々と繰り出していた。原画は約8センチ×14センチと小さいが、作品の出来が素晴らしいため、まったく気にならない。本作は横尾自身が「技術的・体力的に、もう二度とできない」、「自身のイラストレーションの総決算」とまで語った自信作であり、出版から約40年を経ての全点初公開に興奮を禁じ得なかった。
2015/12/11(金)(小吹隆文)
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