artscapeレビュー
Utsuwa et utsushi/うつわ と うつし
2016年01月15日号
会期:2015/12/03~2015/12/20
京都芸術センター[京都府]
パリ日本文化館で2015年1月に開催された展覧会「Ustuwa et utsuahi」の帰国報告展。「『うつわ(器)』と『うつし(写)』うつろいゆく形の生命:モノのかたちの霊的伝播をめぐる新たなパラダイムにむけて」をテーマに、大西宏志、大舩真言、岡本光博、近藤髙弘ら4人の作品が展示された。映像から陶芸までそれぞれ作品の分野は異なるが、空虚(うつつ)を運ぶ容器である器、器によって移されること、複写、移動、映写、継承、交換、さらには取得や憑依まで、いずれも「うつる」「うつす」という本展のテーマを表わす作品である。
大西宏志の作品《Shrine Fish Lumiére》では、小さな厨子のなか置かれた小さなモニターにルイ・リュミエール製作の世界初の実写映画《工場の出口》が映し出されている。近藤髙弘の作品《Reduction》では、等身大に近い大きさの陶器の座像には顔がなくぽっかりと口をあけうつろな空洞をみせている。大舩真言の作品《Reflection field#3》では、窓からの光のなかに佇む小さな岩石が周囲に虚の空間をつくり出している。岡本光博の、ルイ・ヴィトンのモノグラムをモチーフにした一連の作品はパリの展覧会でも展示できなかったという、いわくつきの作品だ。そういえばこの作品は、2010年に神戸ファッション美術館で開催された「ファッション綺譚」展でも会期中に撤去を余儀なくされて話題となった。本展では「虚」というとらえがたいものに耽ってきたが、生々しい問題と結びつくこの作品で「現」の世界へと一気に連れ戻される思いがした。[平光睦子]
2015/12/15(火)(SYNK)