artscapeレビュー

リフレクション写真展

2016年01月15日号

会期:2015/12/08~2016/12/19

表参道画廊+MUSEE F[東京都]

湊雅博がディレクションする「リフレクション写真展」も、今年で8回目になるのだという。場所を変えながら「風景」をモチーフにした写真作品という枠組みを守って続いてきたが、今回は東京・原宿の表参道画廊+MUSEE Fで、阿部明子、榎本千賀子、田山湖雪、由良環という4人の女性写真家たちが参加して開催された。
いつもだと、それぞれが自分のテーマで作品を発表する「個展」の集合体という形式なのだが、今年はもっと展覧会としての狙いがはっきりしていた。榎本が新潟(「砂の都市から」)、田山が静岡県の藤枝(「水くぐり」)、由良が東京・羽田空港周辺(「都市の余白─羽田を歩く」)で撮影したシリーズを発表し、阿部がそれぞれの土地のイメージを重層的にコラージュさせた作品(「田・藤枝・新潟・羽」)をそれらに付け加えていく。実際の展示も写真家個々の名前は表示せずに、互いの写真が重なりあい、浸透するようなかたちに組みあげられていた。
そのもくろみが完全に成功していたかどうかは、やや微妙だと思う。解説抜きだと展示・構成のコンセプトがうまく汲み取れないだけでなく、3つの土地のそれぞれから立ち上がってくる気配が、やや強引な写真の配置によって、むしろ希薄になっているようにも感じた。それでも、このような相互浸透的な「コラボレーション」の試みは、彼女たちの写真家としてのキャリアにおいて、貴重な経験になっていくのではないだろうか。次年度以降のさらなる展開を期待したい。

2015/12/11(金)(飯沢耕太郎)

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