artscapeレビュー
松井利夫展
2016年01月15日号
会期:2015/12/15~2015/12/20
ギャラリー恵風[京都府]
会場には茶碗が11点。それらはどれも岩のような異形の外観を持ち、うち9点の見込み(内側)には漆が塗られていた。作品は2系統に分けられる。8点は、京都大学構内で見つかった弥生時代の水田遺跡を掘り下げて縄文時代の地層から粘土を採取し、同志社女子大学構内の平安時代の邸宅跡遺跡の柱穴に詰め込んで型を取り、野焼きしたものだ。残る3点は、角砂糖を積み上げて型を取り、窯で焼いたものである。見込みに漆を塗ったのは、水漏れ防止という実用的な理由もあるが、縄文土器には同様の事例が多々あるという考古学の常識(しかし一般的にはさほど知られていない)に基づいている。松井はこれまでも、中古陶磁器を再焼成してよみがえらせる「サイネンショー」や、小豆島の石と醤油でやきものを作るなど、コンセプチュアルな作陶を行ってきた。今回の新作も、彼らしい意外性に富んだチャレンジだった。
2015/12/15(火)(小吹隆文)