artscapeレビュー
ニッポンのニッポン──ヘルムート・シュミット
2016年01月15日号
会期:2015/11/09~2015/12/22
京都dddギャラリー[京都府]
日本の日本らしさはどこにあるのだろう? その造形の源流はどこに? オーストリアに生まれ、スイスでタイポグラフィを学んだデザイナー、ヘルムート・シュミット氏は展示を通して私たちに問いかける。青年時代の彼の真摯なまなざしを通して見た「日本の美」をめぐる断章が、静謐でいて簡素な言葉と陰影に富むモノクロ写真のインスタレーションで提示される。シュミット氏が取り上げる対象は、畳・櫛・茶筅・玩具・扇・徳利と杯・竹の花生けなど日常の道具から、柳宗理や横尾忠則のデザインまで幅広い。西洋のデザイナーにかかると、なんの変哲のない「畳」は、前衛的なモンドリアンの抽象絵画に類比されるような美の奥行をもって発見され、「龍安寺」の五群の石で構成される石庭は禅の世界観を表象する独自のグラフィックデザインに変容するのである。会場内を交錯するイメージとテクストを巡り歩くと、その奥には実際のモノが展覧されてもいた。通覧後、シュミット氏とともに日本を再発見する旅に出た気分を味わえる。[竹内有子]
2015/12/12(土)(SYNK)