artscapeレビュー

2012年04月15日号のレビュー/プレビュー

梅田哲也「待合室」

会期:2012/02/07~2012/03/15

オオタファインアーツ[東京都]

ギャラリーの前まで行くと内部が暗く、天井からなにかぶら下がっているのが見えたので、こりゃ工事中かと思ったら、「作品の一部は熱を帯びておりますのでご注意ください」みたいな注意書きが目に入る。つまり「そういう作品」なのだ。ギャラリー内では天井板がはがされ(元からあったっけ)、配管や空調機がむき出しになっている。一部の配管は垂れ下がり、先っぽから水が滴り落ちて床に置かれたタライにポタポタと。火の灯ったアルコールランプや袋入りの水苔など、とにかく意味ありげなものがいろいろとインスタレーションされている。貸し画廊じゃあるまいし、これでいったいなにを売ろうというのだろう。そのことも含めて、これはギャラリー空間をひと皮むくインスタレーションではないかと。

2012/03/06(火)(村田真)

イ・ブル「私からあなたへ、私たちだけに」

会期:2012/02/04~2012/05/27

森美術館[東京都]

なにか既視感があるなあ。以前、国際交流基金フォーラムで主要作品を見たせいもあるが(そのときのほうがインパクトが大きかった)、それだけではない。まず思い出したのは、2年前に同じ森美術館でやった小谷元彦の個展。作品だけでなく展示構成や照明も似たような印象を受ける。そこからの連想ゲームで松井冬子、椿昇、草間彌生、ルイーズ・ブルジョワまで芋づる式に浮上してきた。芋づるといえば束芋も入れとこう。さてこれらに共通するものはなんだろう? たぶんそれは、ある種の内臓思考であり、甲殻嗜好であり、増殖志向だ。と思いつくことをテキトーに書いてみて、自分でなるほどと思った。これらはアートだけでなく近年のサブカルチャーの傾向でもあるのだ。彼女はしばしば韓国の政治・社会的問題と結びつけて語られがちだが、それよりむしろ同時代のサブカルチャーとのつながりを見たほうが理解しやすいかもしれない。

2012/03/06(火)(村田真)

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MAMプロジェクト 016:ホー・ツーニェン

会期:2012/02/04~2012/05/27

森美術館ギャラリー[東京都]

植木の手入れをする老婆、ベッドに横になるデブチン、古道具屋の薄汚いおやじ……悪い夢みたいな映像。途中で出た。

2012/03/06(火)(村田真)

笹岡啓子「Difference 3.11」

会期:2012/03/07~2012/03/13

銀座ニコンサロン[東京都]

ニコンサロンの連続企画展「Remembrance3.11」の第2弾。笹岡啓子は2010年4月17日に岩手県陸前高田市を撮影したのを皮切りに、岩手、宮城、福島の太平洋沿岸の各地を何度も訪れて被災地にカメラを向けた。笹岡は広島の出身なので、さまざまな場所で原爆投下直後の状況を思い起こさないわけにはいかなかったという。
だが、展示されている写真を見ると、笹岡がつとめて冷静に、そこにある光景を写しとろうと心がけている様子が伝わってくる。ハッセルブラッドに6×4.5判のデジタルCCDをつけて撮影したイメージは、細部まで丁寧に押さえられていて、その眺めを記録し、保存しておくという彼女の意志が明確に伝わってくるのだ。むしろ極力表現的な意識を抑制する態度で撮影された写真群こそが、クオリティの高い記録として残っていくのではないだろうか。もうひとつ重要なのは、展示において岩手や宮城と福島の写真の「Difference(違い)」が強調されていることだろう。瓦礫に覆われた津波の被害地と対照的に、福島県南相馬市、飯館村などの光景は、「3.11」以前とまったく変わっていないように見える。いうまでもなく、放射能汚染の爪痕がそこここに残っているわけだが、それが写真に写っていないことが逆に怖さを増幅させる。そのあたりにも、笹岡の批評意識がきちんと表われているといえるだろう。なお、本展は3月29日~4月4日に大阪ニコンサロンに巡回した。
新宿ニコンサロンでは同時期に田代一倫「はまゆりの頃に」が開催されていた。こちらは岩手県から福島県まで、被災地と内陸部の人々のポートレートを粘り強く撮影し続けた労作である。

2012/03/07(水)(飯沢耕太郎)

平松伸之「Bricolage」/栗山斉「impermanent preservation[sunflower project]」/名古屋芸術大学“メディア系”シリーズ展示7

アートラボあいち[愛知県]

会期:2012/02/22~03/10、2012/02/29~03/11、2012/03/03~03/14
名古屋の長者町にあるアートの拠点では、各階でいつも若手作家の展覧会を行なっている。やはり当たり外れはあるのだが、今回は3フロアともにおもしろい作品が重なった。地下では、平松伸之の名古屋を舞台にした演歌のカラオケ風映像とあいちトリエンナーレ2013の芸術監督である筆者へのメッセージ、2階では、栗山斉のヒマワリと放射線の関係を示唆する静謐な作品、そして3階の名古屋芸術大学のメディア系シリーズ展示では、菅沼朋香による名古屋の昭和スポットめぐりのプロジェクトである。

写真:上=栗山斉、下=菅沼朋香

2012/03/08(木)(五十嵐太郎)

2012年04月15日号の
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