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2014年03月15日号のレビュー/プレビュー

アサヒ・アートスクエア オープン・スクエア・プロジェクト2014「Alterspace──変化する、仮設のアートスペース」

会期:2014/01/11~2014/02/02

アサヒ・アートスクエア[東京都]

浅草のアサヒ・アートスクエアのスペースを公募で選んだキュレーターに全面開放し、創造的に活用してもらおうというプロジェクトの第3弾。選ばれたキュレーターは水田紗弥子で、彼女の提案したのが「オルタースペース」というもの。これはインディペンデント・キュレーターならではの発想で、展覧会というものを特定の場所に固定させずに移動、変化、継続していくためのプラットフォームとしてとらえている。彼女によれば「架空の公園のような、移動式サーカスのような、四次元ポケットのような」ものだという。展示は、水田企画の日中韓7人のアーティストによる「乱視の光」に加え、中村土光企画の日替わり個展と対話による「なんかいう/考え中」、近藤恵介企画の「12ヶ月のための絵画」、CAMP企画の「漂流メモ」なども混在し、全体でオルタースペースを形成している。段ボールやベニヤを多用したストリート系の作品が多いうえ、ステージやカフェもあり、あっちでは映像が流され、こっちではシンポジウムが行なわれ、バザールみたいににぎやか。それはいいのだが、個々の作品を見てもたいしておもしろくないというか、気が散って集中できないというか、そもそもどっからどこまでが誰の作品かもわかりづらいのだ。まあ公園だってバザールだって「誰の作品か」なんて考えたら楽しめないし。

2014/02/01(土)(村田真)

セデック・バレ

映画館で見逃した『セデック・バレ』をようやくDVDで見る。日本統治下の台湾で起きた原住民の武装蜂起事件を描いた作品だが、恥ずかしながら、1930年の霧社事件そのものを全然知らなかった。二部構成で、合計4時間半である。凄まじく気合いの入った大作だ。最近、日本映画にこういうレベルの作品がないことを寂しく思う。日本への不満が蓄積していたとはいえ、霧社事件の大量殺戮が連鎖するきっかけは、実に些細なトラブルだった。むろん、映画の作りがそうなっていることを差し引いても、興味深いのは、日本人が見ても、セデック族を支配し、事件を契機に容赦ない反撃をする日本人よりも、セデック族に感情移入させることだろう。それはセデック族がたとえ民族が滅んでも、負けを覚悟で、誇りのために闘うこと、女性や子どもが集団で自決を選ぶからである。これは太平洋戦争時の日本の悲惨なメンタリティを先取りしたかのようだ。ただし、日本と違い、セデック族の場合は国家が仕向けたわけではない。

2014/02/01(土)(五十嵐太郎)

磯崎新 都市ソラリス 第二期

会期:2014/01/15~2014/02/08

NTTインターコミュニケーションセンター[ICC]ギャラリーA[東京都]

インターコミュニケーションセンターの磯崎新による「都市ソラリス」展の第二期に立ち寄る。筆者が参加した二回目のトークの流れも、壁にマンガで紹介されたほか、鄭州市鄭東新区の都市計画の巨大模型に平川紀道の映像、hclabによる鄭東新区街路ネットワークなどを新しく追加していた。インターコミュニケーションセンターの立ち上げで開催された磯崎の海市展がそうだったように、会期中に変化していく展覧会である。

2014/02/02(日)(五十嵐太郎)

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さわひらき Under the Box, Beyond the Bounds

会期:2014/01/18~2014/03/30

東京オペラシティ アートギャラリー[東京都]

東京オペラシティアートギャラリーのさわひらき展へ。誰もいない部屋の中を人知れず静かに航空機が飛び交う、あるいは小さな動物たちが歩く、またレコードと記憶など、前半の旧作は、すでにだいぶ見ていた。今回は天文台での新作などが追加された。展示の最後に設置された鏡と映像のインスタレーションがよかった。印象的だったのは、訪問時に来場者の9割以上が女性だったこと。なるほど、女性好みの作品かもしれない。

2014/02/02(日)(五十嵐太郎)

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ザ・イースト

映画『ザ・イースト』を見る。民間のセキュリティ会社の依頼を受けた元FBIの女性が、企業を攻撃する環境テロリストの集団に潜入捜査していくうちに、やがて彼らの思想と行動にひかれていく。国家や既存の善悪の枠組が機能しないグローバル資本主義の世界において、何が「正義」なのかが揺らぐ、社会派のすぐれた作品である。現代社会の一断面をうまく切り取りながら、類例がない設定によるサスペンスとしても面白い。

2014/02/02(日)(五十嵐太郎)

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