artscapeレビュー

2014年03月15日号のレビュー/プレビュー

2013年度京都芸大博士展

会期:2014/02/01~2014/02/16

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA @KCUA1,2[京都府]

悪天候のせいか、ほかに客がいない。そのためやけに監視のおっちゃんの愛想がいい。会場は2フロアに分かれているが、出品は絵画、彫刻、工芸など合わせて14人(うち6人が外国人名)なのでゆったり余裕の展示。でも作品はパッとしないなあ。蛍光色とラメを多用した中田有美のポップなアンフォルメル絵画が目を引いた程度。

2014/02/14(金)(村田真)

九鬼みずほ個展「ただの置物、絵画まで」

会期:2014/02/11~2014/02/16

KUNST ARZT[京都府]

小さなギャラリーの壁にしつらえた棚に、人形や植物など約600体の小さな置物が並べてある。置物はどれも高さ10センチ前後で、人か草花か判別できる程度にざっくり造型され、彩色されている。脇のサブギャラリーにはその置物を描いたドローイングが飾られ、ちょっと尋常ならざるものを感じるなあ。作品ファイルを見ると、以前からモコモコした地蔵みたいなものをつくり、それを描いていたらしい。絵を描くために造型してるのか、造型したついでに絵を描いてるのかよくわからないが、そんなことどうでもいいような気がしてくるほど「作品力」を感じる。

2014/02/14(金)(村田真)

せんだいスクール・オブ・デザイン 2013年度秋学期学内講評会

東北大学片平キャンパス都市建築学専攻仮設校舎プロジェクト室1・2、ギャラリートンチク[宮城県]

せんだいスクール・オブ・デザインの学内発表会を行う。筆者が担当するメディア軸は、『S-meme』7号を制作した。今回の前衛的な装幀は、全ページがリング状につながり、その表裏に印刷されたリバーシブルである。したがって、本が広がり、その中をくぐったり、数人で回転寿司のように読むことができる。本が空間を獲得し、オブジェのような形態にも変わる。7号のテーマは、「仙台文学・映画の想像力」だ。メイン講師の文芸批評家・編集者の仲俣暁生と、荒蝦夷の編集者・土方正志のレクチャーを収録しつつ、震災後文学の書評を数多く掲載し(黒川創、古川日出男、川上弘美、佐伯一麦2冊、高橋源一郎、三浦明博、伊坂幸太郎、いとうせいこう2冊、瀬名秀明、橋本治、玄侑宗久、熊谷達也、絲山秋子など)、受講生の議論によって、S-meme震災後文学賞を決定した。その結果、選ばれたのは、玄侑の『光の山』である。また全員で仙台文学館を訪れ、こう改良したらいいという提案20を練って、担当の学芸室長とトークを行った内容や、ここの資料を活用した宮城の文芸誌の装幀史も含む。ほかに文学系では、西村京太郎と伊坂幸太郎の仙台を描いた小説の比較、文学に描かれた仙台のX橋論など。映像サイドでは、せんだいメディアテークの小川直人のレクチャー、仙台を描いたアニメ『Wake Up, Girls!』論。またオーストラリアのクイーンズランド大学とのワークショップで、映画化された伊坂の『ゴールデンスランバー』をブリスベンでロケハンする作業を通じて、二都市の比較を行った。

2014/02/14(金)(五十嵐太郎)

TPAMショーケース参加作品 ARICA「しあわせな日々」

会期:2014/02/14~2014/02/16

横浜赤レンガ倉庫 1号館3Fホール[神奈川県]

横浜赤レンガ倉庫にて、ARICAの「しあわせな日々」を観劇。絶えずひとりでしゃべっているのだが、上半身しか動かない安藤朋子のほぼ独演なので、緊張感が途切れることがない。音の存在感も大きい。あいちトリエンナーレ2013の初演から変わったところもあり、作品がパワーアップしていた。今回はベケットの原文字幕が同時に表示されており、日本語訳の妙もリアルタイムで堪能できる。終了後、アーティストの金氏徹平による舞台装置の背後を見学させてもらったが、前から見えない部分はやはりシンプルかつ機能的だった。

2014/02/15(土)(五十嵐太郎)

スノーピアサー

ポン・ジュノ監督の映画『スノーピアサー』を見る。凍りついた世界で、一年で地球を一周するノアの箱舟としての走り続ける列車が舞台だ。徹底した動く閉鎖空間である。フランスのバンド・デシネを原作とし、それと通じる独特の美意識が全編を貫く。SFとしてはツッコミどころ満載だが、各車両がさまざまなビルディングタイプとなり、直列につながった線状都市をひたすら前に進むのは映画的に面白い。スーパースタジオのディストピア、12の理想都市を思い出す。最近、DVDで『ザ・スパイダースのゴー・ゴー・向こう見ず作戦』(1967)を見たのだが、これもただ一直線に前に前に歩いて進むというとんでもなくバカバカしい単純な設定だが、それが社会に巻き起こす騒動が意外に興味深い。

2014/02/17(月)(五十嵐太郎)

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