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2014年09月15日号のレビュー/プレビュー

イントゥ・ザ・ストーム

映画『イントゥ・ザ・ストーム』(監督:スティーヴン・クォーレ)は、空港の飛行機まで浮き上がらせ、街を徹底的に破壊しており、『ツイスター』や『パーフェクト・ストーム』を軽く超える暴風の凶暴ぶりで、災害映画に期待される最重要ポイントをクリアしていた。物語としては、家族愛がどうのこうのよりも、多視点、多カメラの状況において、人はどうふるまうのかが興味深い。意外に良かったのが、脇役だが、冒険バカ二人組のキャラだった。

2014/08/22(金)(五十嵐太郎)

ランドマーク・プロジェクトV──松本秋則

会期:2014/08/01~2014/10/31

横浜市庁舎1階[神奈川県]

関内駅前に建つ横浜市庁舎の吹き抜けロビーに、松本秋則による竹と紙のサウンドオブジェが据えられている。風力ではないけど、コンピュータ制御でもない、アナログなタイマーを使った装置から発せられる音は、フォンフォンフォン、シャラララーンと風鈴のように涼しげ。デジタル音にはない癒しの効果があるのだろう。その下のベンチにはヒマそうなおっさんたちが気持ちよさげにたむろってるが、ひょっとしたら「るっせーなー」と思ってるかもしれない。

2014/08/22(金)(村田真)

たよりない現実、この世界の在りか

会期:2014/07/18~2014/08/22

資生堂ギャラリー[東京都]

うっかりしていた、今日が最終日だった。荒神明香とwahドキュメントらによるチーム「目」の展示。夕方、駆けつけてみたら、地下のギャラリーにいたる入口はドアで閉ざされ(普段ドアなんてない)、その前に行列ができている! こんなこと初めて。フェイスブックで話題になってるのかしら。「点検口」と記されたドアの前に立つスタッフが5人ずつ招じ入れている。階段からギャラリーまでのアプローチには工事中のようなインスタレーションが施され、これは期待できそう。ギャラリー空間は見事にホテル(の廊下)に変容していた。コの字型の廊下の左右に客室のドアがついていて、どれもノブは回るけど開かない。突き当たりの奥の部屋だけドアが開いていて、入るとベッドからテーブルから照明から客の服や荷物まで、客室を完璧に再現している。驚いたのは、壁の姿見から人が出てきたこと。鏡だと思ったら穴が開いてるだけで、向こう側に左右対称の部屋をしつらえているのだ。これはスゴイ。いやこれだけで終わってりゃスゴイで済むんだけど、まだある。廊下の途中に数段の階段があり、上ってみると、暗闇の中空に薄ぼんやりと発光する球体が浮かんでる。これを月か土星に見立てると風流かもしれないが、幸か不幸か2、3日前に広島市上空に赤い球体が浮かぶ模型を見てきたばかりの者としては、もっと恐ろしいものを連想せざるをえない。さらにここが地下に掘られたギャラリーであることを思えば、この地下ホテルが核シェルターのように見えてこないでもない。限りなく連想が膨らむ力作でした。

2014/08/22(金)(村田真)

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オープン・スペース2014

会期:2014/06/21~2015/03/08

NTTインターコミュニケーション・センター[ICC][東京都]

常設エリアの志水児玉の水の波紋でレーザー光のリフレクションが複雑にゆらめく作品が良い。現時点では、まだその映像をコンピュータが計算するよりも、水という自然現象に委ねるほうが早く精度が高いのだろう。「ひらめきとはてなの工場」展は、岡田憲一のピクセルファクトリーがアナログ感覚で楽しい。

2014/08/23(土)(五十嵐太郎)

絵画の在りか

会期:2014/07/12~2014/09/21

東京オペラシティ アートギャラリー[東京都]

70年代、80年代生まれの若手の作家を紹介するものだが、いつもの展示とルートを変え、空間も全然違う使い方で新鮮だった。小西紀行ほか、すでに注目していた作家も何人か参加している。絵を拡張する松原壮志朗や南川史門、ダム絵画の横野明日香らも興味深い。

2014/08/23(土)(五十嵐太郎)

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