artscapeレビュー

2017年03月15日号のレビュー/プレビュー

榎本耕一「ストーン」

会期:2017/01/14~2017/02/18

タロウナス[東京都]

さまざまな状況下における人物を描くが、共通する特徴がいくつかある。人物の顔が古代人風であること、にもかかわらず一部がロボット、つまりアンドロイドであること、また一部が透明であること、寝ているのか倒されたのか死体なのか、とにかく横たわる人が多いこと。また、前景や中景には石や植物が克明に描かれ、東京の都市風景や地球の画像が顔を出し、部分的にどこかで見たことのある不穏なイメージがコラージュ的に組み合わされ、そしてそれらが根気よく丁寧に描かれていることだ。これはいい。

2017/02/17(金)(村田真)

皆、シンデレラがやりたい。

会期:2017/02/16~2017/02/26

本多劇場[東京都]

根本宗子「皆、シンデレラがやりたい。」@本多劇場。これまで見た根本作品はプロットの複雑過ぎる部分が気になったが、これは気負いがなく、楽しめる。アイドルの追っかけをこじらせた3人の40代女性がスナックにこもって、twitterを武器に女性アイドルに戦いを挑む。物語の最後のパズルのピースは早く読めてしまったが、納得の大団円だった。

2017/02/17(金)(五十嵐太郎)

アスリート展

会期:2017/02/17~2017/06/04

21_21 DESIGN SIGHT[東京都]

前回の「食べ物」を「見世物」にする企画展はリサーチ量も半端なく、とてもうまくいっていたと思うが、今回のもともと十分に「見世物」として大人気のスポーツを、あえて展覧会でもう一度「見世物」にするのはなかなかハードルが高いなと感じた。それぞれに工夫された展示ではあったが。

2017/02/17(金)(五十嵐太郎)

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堀部安嗣展 建築の居場所

会期:2017/01/20~2017/03/19

TOTOギャラリー・間[東京都]

実見したことがあるのは《竹林寺納骨堂》のみだが、その佇まいを模型で伝えるのは難しい。特に《阿佐ヶ谷の書庫》は、本好きにとって見てみたい空間だ。一方、上階では、堀部のドラムから始まる映像作品『建築の鼓動』がかなりそれを遂行していた。もっとも、竹林寺は自分も見ていたので、何が再現できないかもわかるけれど。

2017/02/17(金)(五十嵐太郎)

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石塚元太良「Demarcation」

会期:2017/01/20~2017/03/26

916[東京都]

以前はややふらついて不安定に見えた石塚元太良の写真家としての姿勢が、しっかりと揺るぎのないものになってきている。今回、東京・港区海岸のギャラリー916で開催された彼の個展には、アラスカ、アイスランド、オーストラリアで10年以上にわたって撮影されてきた「パイプライン」のシリーズから、22点が展示されていた。
すでに写真集にもまとめられているシリーズだが、あらためて展示を見ると、無人の原野を貫いて走る原油パイプラインの姿が、現代社会の状況を照射する、とても象徴的な「風景」であることがよくわかる。自然と文明というのは、やや使い古された二元論ではあるが、それを単純に善と悪、美と醜との対立に解消することなく、8×10インチの大判カメラの、精密かつ豊かな描写によって、あるがままに見直そうとする力作である。916のゆったりとした展示空間に、写真がいい具合にフィットしていた。
だが、写真家としての眼差しのあり方がきちんと定まってくるということは、反面、ものの見方が固定化してくるということでもある。その意味で、今回916の別室で展示された新作の「N/P」のシリーズは、なかなか興味深い試みだった。撮影場所を「自宅内」に限り、ポジフィルムとネガフィルムで同じ被写体を少しずらして撮影し、2枚を重ね合わせてプリントしている。思いつきがそのまま形になっただけに見えるが、逆にその軽やかさが、「パイプライン」シリーズの大上段に振りかぶった重々しさをうまく中和していた。むしろいまの彼には、こういう「息抜き」が必要なのではないだろうか。そのあたりから、思いがけないかたちで次の展望が開けてきそうにも思える。

2017/02/18(土)(飯沢耕太郎)

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