2019年12月01日号
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artscapeレビュー

竹原義二/原図展 素の建築

2011年05月01日号

会期:2011/03/09~2011/04/10

大阪くらしの今昔館[大阪府]

展覧会場に入ると、どこからともなく木の香りが漂う。久しく忘れていた匂いだ。続いて、無垢の木材からなる剥き出し=「素」の架構空間、素材と構造それ自体が目の前に立ち現われ、リアリティをもって迫ってくる。建築家自身が言うように、ここには「逃げ」がない。材質の魅力・木組みの技(本展では建築に用いられている木組み工法を実際の映像でみることができる)言うなれば竹原義二の美学が集約されている。建築家と職人の仕事すべてを集約する、ありのままの顕わな「構造」が生み出す迫力を、架構空間の中を歩き、柱を触って確かめた。竹原の事務所ではいまでも手で図面を引くという。たくさん展示された竹原の手描き原図には、建築家の熟慮と苦労の痕跡が刻み込まれている。スチール模型(100分の1スケール)の多さは、竹原のこれまでの設計活動の長きを感じさせる。もうひとつ展示のなかで興味深かったのは、造形作家・有馬晋平のスツール《スギコダマ》。これもまた、一つひとつ異なる素材が活かされ、手の技が根幹を成し、使い込むことで味わいを増す点で、竹原の「素の建築」の思想と重なりをみせている。簡素でいて有機的なフォルムは、スギの「木霊(木魂)」を宿した「小玉」を意味する。すべすべとした柔らかなテクスチュアは、作り手の確かな技術に裏打ちされている。いすに刻まれた年輪は見た目にもうつくしいばかりか、手で触れれば自然が創りだす刻みを感じ取ることができる。「全ては無に始まり有に還る」「建築は何も無い場所から立ち上がる」。これは竹原の設計思想だが、建築が建ちあがるまでのすべての営み──ことに人との協働──年月と共に生き続ける建築のあるべき道を彷彿とさせるその構えには、胸を打たれる心地がする。思考と素材と手技が織りなす美のありようを実感した展覧会だった。[竹内有子]

2011/04/06(水)(SYNK)

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