2019年12月01日号
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artscapeレビュー

EV(電気自動車)が約束する未来展

2011年05月01日号

会期:2011/03/20~2011/04/05

世田谷文化生活情報センター「生活工房」[東京都]

電気自動車の歴史、日本EVクラブや生活工房がこれまで行なってきた電気自動車普及活動の報告、電気自動車にまつわる疑問への答え、そしてこれからの電気自動車に対する企業の取り組みを紹介する展示会である。
電気自動車の開発が推進される理由はおもにふたつある。ひとつは、石油資源の将来的な枯渇と価格高騰への備えである。もうひとつは、化石燃料の使用がもたらすといわれる地球温暖化への危惧である。電気がクリーンなエネルギーであることが、その大前提になる。しかしながら、この展覧会が始まる直前、3月11日に発生した東日本大震災により生じた東京電力福島第一発電所の「想定外」の事故によって、電気はクリーンなエネルギーであるという前提が崩れてしまった。もちろん、電気は原子力発電によってのみつくられるわけではない。しかし、現時点での電気自動車は、その普及に深夜の余剰電力を前提としている。また、脱化石燃料が電気自動車普及への大きなモチベーションになっているので、火力発電による電力供給はその目的に逆行する。展覧会に関連して開催された日本EVクラブの舘内端代表のトークにおいても、「EVは原発と共犯なのか?」というテーマで議論が盛り上がったという。
会場には、電気自動車オーナーに取材したレポートも掲出されていた。いずれも排気ガスが出ないことを電気自動車のメリットのひとつとしてとらえているようだ。会場の通路には明るい緑色のカーペットが敷かれ、同系色のビニルひもを用いた簡易な間仕切りが下げられている。展示パネルには、車から植物の芽が出るシンボルマークが添えられている。エコ一色である。しかし電気自動車によって本当に問題は解決されうるのだろうか。疑問は残る。自分の足下はきれいになったとしても、排気ガスの出る先が火力発電所の煙突に変わっただけということはないのだろうか。原子力発電は問題を空間的に地方へ、時間的には未来に転位させてきたとはいえないのだろうか。デザインには問題を明らかにし、それを解決に導くチカラがある。一方で問題を覆い隠し、あたかもそれが解消したかのように見せかける作用もある。電気自動車の利用によって化石燃料に起因する問題の本質が解消されうるものなのか、そこにデザインがはたしている役割も常に検証していかなければならないだろう。当初の意図とは異なるかもしれないが、この展覧会は自動車、あるいは私たちが享受しているさまざまな利便性とエネルギー消費との関わりを考え直す、とても良い企画であった。[新川徳彦]

2011/04/05(火)(SYNK)

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