2019年12月01日号
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artscapeレビュー

ジャケ買いのビガク──誘惑するジャケットデザイン

2011年05月01日号

会期:2011/04/10~2011/05/08

世田谷文化生活情報センター「生活工房」[東京都]

「ジャケ買い」とは、音楽と無関係に、ジャケットデザインの好みだけでレコードやCDを購入すること。展示はふたつの企画で構成されている。ひとつは「ジャケ買い」ドキュメンタリー。アートディレクターの伊藤桂司、森本千絵の両氏がレコードをジャケ買いする。買ったレコードは互いに交換され、それぞれが曲を聴いて新たなジャケットをデザインする。相手に渡されるのはレコード盤のみで、元のジャケットデザインは参考にしないというルール。会場にはオリジナルのジャケットと新たにデザインされたジャケットが並べて展示され、またジャケ買いからデザインまで、両氏の姿を追った映像作品が流されている。
もうひとつは「ジャケ買い」体験。企画に参加したグラフィックデザイナーたちがジャケ買いしたレコードが展示されている。そればかりではない。ディスクユニオンの協力を得て、会場には2,000枚のレコードが用意されている。会場を訪れた者は、ラックの中から好きなジャケットデザインを選び、側に設置されたプレーヤーでそのレコードを試聴できる。つまりここではジャケ買いを疑似体験できるのだ。この企画はとてもスバラシイ。
アナログレコードからCD、そしてデジタル配信へと音楽メディアや流通形態が変化し、また音楽を聴く場も変わってきた。はたしていまの若者たちは店頭に足を運び、音楽を「ジャケ買い」することはあるのだろうか。二十歳前後の学生に「ジャケ買い」経験の有無を聞いてみた。150名のうち、経験アリは60名。ジャケ買い対象のほとんどはCDで、レコードと答えたものは1名のみ。本やDVDをジャケ買いするという者もいる。そしてジャケ買いの結果が「アタリ」だったという者は半数強。「ハズレ」も少なくないらしい。よくジャケ買いするという学生は「たいていがハズレだが、そのぶんアタリだったときの喜びが大きい」とコメント。なるほど、メディアは変わってもジャケ買いの「ビガク」は健在のようだ。[新川徳彦]

2011/04/18(月)(SYNK)

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