2019年12月01日号
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artscapeレビュー

鴻池朋子 隠れマウンテン 逆登り

2011年05月01日号

会期:2011/03/09~2011/04/09

MIZUMA ART GALLERY[東京都]

〈3.11〉の衝撃。そのひとつは、どんなアートも、地震と津波、そして原発のイメージと重なって見えてしまうことだ。とりわけ黒々とした波が次々と押し寄せ、街を一気に呑みこんでいく、あの恐ろしい映像は、当分私たちの脳裏から離れることはないだろう。このことは、おそらくアーティストにとっても同じで、突如として現われた強烈な現実を前に、いったいどんな豊かな想像の世界を創り出すことができるのか、それぞれ自問自答を繰り返しているに違いない。なにしろシュルレアリスムでしか見られなかった光景が、被災地では半ば現実となってしまっているのだから、そんじょそこらの想像力ではとても太刀打ちできないことは誰の眼にも明らかだ。鴻池朋子の新作は、もちろん震災以前に制作されたものだが、以前にも増して画面に強く立ち現われた自然性と神話性、すなわちアニミズムが、大震災で疲弊した私たちの心に深く滲みこんでくる。人間と動物が融合した神話的な生物は、もしかしたら自然の脅威を目の当たりにした太古の人間が、魂の救済を求めて止むにやまれず創り出したものではないか。そのように考えてしまうのも、あるいは少なからず大震災の影響なのかもしれないが、文字どおり言語を絶する被害の大きさには、それ相応の言語を超越した視覚的イメージが必要不可欠であることは間違いない。

2011/03/23(水)(福住廉)

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