2019年12月01日号
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artscapeレビュー

江戸民間画工の逆襲

2011年05月01日号

会期:2011/04/02~2011/05/08

板橋区立美術館[東京都]

同館の所蔵品を見せる展覧会。酒井抱一、鈴木其一、司馬江漢、加藤信清、歌川広重、月岡芳年など56点が、幕府御用絵師の狩野派に相対する「民間画工」として位置づけられて展示された。大きな特徴は、お座敷コーナー。36枚の畳を敷き詰めた大広間に、河鍋暁斎の《龍虎図屏風》や英一蜂の《士農工商図屏風》などをそのまま置いて見せた。ガラス越しに眼を細めて鑑賞する通常の鑑賞法とは対照的に、珠玉の屏風絵を間近に座布団に座りながら心ゆくまで堪能できる仕掛けが心憎い。ただ、この露出展示という方法が、市井の人びとによって楽しまれた「民間画工」という文脈を効果的に際立たせていることは十分理解できるにしても、その一方でいくぶん中途半端な印象も否めなかった。というのも、せっかくここまで空間をつくり込んだにもかかわらず、照明には一切工夫が見られなかったからだ。屏風絵が生きていた空間を忠実に再現するのであれば、思い切って館内の照明を落とし、行灯のおぼろげな光だけで鑑賞させるべきだったように思う。むろん江戸時代には「電力」も「美術館」もなかったのだから、江戸の空間を完全に甦らせることはどだい無理があるのかもしれない。けれども、現代社会を代表する両者がいずれも隘路に陥っていることを思えば、いっそのこと「江戸」にあわせて「電力」と「美術館」のかたちを内側からつくり変えていくことも考えるべきではないか。社会革命や文明批判のためだけではない。そのほうが、「作品」がよく映えるに違いないからだ。

2011/04/16(土)(福住廉)

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