2021年12月01日号
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artscapeレビュー

日活創立100周年の上映会や企画展

2012年11月01日号

1912(大正元)年9月10日、国産活動写真4商社が合併して日本活動写真株式会社(日活)が誕生した。創立100周年を迎えた今年、これを記念して各地で日活映画の上映会が開かれているほか、その映画づくり歴史を振りかえる展覧会も開催されている。展示テーマは撮影所であったり、映画の主題であったり、経営であったり、それぞれの館の特徴が現われていてとても興味深い。
 日活創立の翌年1913(大正2)年、墨田区向島に向島撮影所が建設される。ここにはガラス張りのステージのほか、現像や編集の機材、衣装や道具を製作する設備が整えられ、1923年の関東大震災までにおもに新派映画と呼ばれる現代劇が、約760本も制作されたという。すみだ郷土文化資料館の展示では当時の写真資料と映画ポスター、雑誌を中心に、向島撮影所の歴史をたどる。東京大空襲でも多くの資料が失われたなか、向島撮影所に勤めていた樋口哲雄カメラマンのご子息が当時の写真アルバムを保存しており、これから資料館とご子息とで撮影所の研究と分析が進められるという。
 1934(昭和9)年には調布市に多摩川撮影所が開設される。この撮影所は戦時統制による合併により大映多摩川撮影所(現・角川大映撮影所)となったが、戦後1953(昭和28)年に日活は新たに調布市に撮影所を建設した。調布市郷土博物館の展示は日活撮影所のほか、「東洋のハリウッド」としての調布に焦点をあてる。映画雑誌、ブロマイド、チケット、脚本やプログラム、役者が描かれたメンコやカルタなど、マニアックな展示品の多くは映画史研究家・畑三郎氏のコレクション。
 川崎市市民ミュージアムでは、1950年代から60年代に制作された日活アクション映画の上映と合わせて、日活ダイヤモンド・ラインと呼ばれた俳優や共演した女優たちをポスターや撮影小物、衣裳などで紹介する。日活の女優たちの衣裳を手がけたのは、森英恵。日活からの貸し出し品とのことであるが、展示されている衣裳の保存状態がよいことに驚かされる。
 東京国立近代美術館フィルムセンター展示室では、1912年の創業から現在までの日活の包括的な歴史を、撮影所の立地や経営主体の推移によって5つのパートに分けてたどる。特筆すべきは会場の一角につくられた小部屋。18禁の表示。ピンク色ののれんをくぐると、そこは日活ロマンポルノのコーナーである。数々のポスターと、ロマンポルノカレンダー(展示は複製)は、いずれもフィルムセンターの収集品。日活の歴史のなかでも、あるいは今日の映画界で活躍する才能を輩出したという点でも、1970年代から80年代のロマンポルノの時代は避けて通ることができない存在であるはずだが、諸事情で他館ではなかなか展示できないようだ。11月からはフィルムセンターの大ホールで、ロマンポルノを含む日活作品の上映会が開催される。[新川徳彦]

日活向島撮影所 展


会期:2012年7月28日(土)~11月4日(日)
会場:すみだ郷土文化資料館
東京都墨田区向島2-3-5/Tel. 03-5619-7034


日活100年と映画のまち調布


会期:2012年8月12日(日)~10月21日(日)
会場:調布市郷土博物館
東京都調布市小島町3-26-2/Tel. 042-481-7656


日活創立100年記念資料展


会期:2012年8月4日(土)~11月4日(日)
会場:川崎市市民ミュージアム
神奈川県川崎市中原区等々力1-2/Tel. 044-754-4500


日活映画の100年 日本映画の100年


会期:2012年8月14日(火)~12月23日(日)
会場:東京国立近代美術館 フィルムセンター
東京都中央区京橋3-7-6/Tel. 03-3561-0823

2012/10/11(木)ほか(SYNK)

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